心にも傷残す「最古の商い」朝日新聞朝刊 1999.11.27 敗戦後に進駐軍相手の売春婦になり、精神的にぼろぼろに傷ついて発病した患者は、「夫はマッカーサーだ」と誇らしげに語っていた。もちろん夫というのは事実ではない。たぶん人生の「傷」とする思いが強く、その相手が無名の米軍人ではプライドが許さなかっ...
復しゅう心にひそむ攻撃性朝日新聞朝刊 1999.11.20 最近、リベンジという言葉をよく聞く。報復という意味だ。報復殺人と言えば恐ろしい行為のようだが、原因があって、その仕返しをするという意味では、分かりやすい犯罪だ。いかに常軌を逸した残虐な行為であっても、計画的な犯罪だけに、責任能力がなかった...
苦しい現実、逃げたい時も朝日新聞朝刊 1999.11.13 下請けのさらに孫請けの悲哀か、ある町工場が不況の中で倒産した。中年の社長は酒浸りの日々で肝臓を悪くし、意識を失ったりけいれん発作が出たりするようになった。一にも二にも仕事が生きがいだった。ひと仕事終えてからの酒が楽しみで、業界の付き合いと...
医療と医学 近くて遠きもの朝日新聞朝刊 1999.11.6 「小児マヒをもたらすポリオウイルスの解明に全力を投入していたのに、ワクチンの導入で、原因究明の研究費はゼロにされた。医療とはそういうものだが、医学はそれでいいのか」。もう四半世紀も前だが、高名な分子生物学者が語ってくれたのが忘れられない。実...
ダンスでいやす被ばくの苦痛朝日新聞朝刊 1999.12.4 長崎で被ばくしてから、長い闘病の人生を続けている男性が、慢性関節リウマチの痛みで眠れないと訴えて精神科を受診した。 「戦時中でしたが、社交ダンスでチャンピオンになったことがあります。被ばく者としていろんな病気を患い、仕事もままならず、ダ...
幸福のクローバー、まず健康朝日新聞朝刊 1998.09.19 異性、金銭、地位、健康の四つが、分裂病再発のきっかけになる。むかし江熊要一という精神科医がこう主張し、後に「四つ葉のクローバー」と例えられた。 四つ葉のいずれにも無関心という人は少ない。すべてに満たされている人も少なそうだ。人の世の不...