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「逆境」対策に周囲の支えも

  • 執筆者の写真: kayukawa-clinic
    kayukawa-clinic
  • 2021年12月13日
  • 読了時間: 2分

更新日:4月3日

朝日新聞朝刊 1999.2.13  いじめられて不登校になり、家に引きこもっていた患者が、夜中にビルから身を投げた。文部省は昨年十二月、いじめの発生報告件数は愛知県が最多だったと発表した。

 いじめの形態は、直接的な暴力から中傷、陰湿な無視まで様々だ。学校ではいじめ、親からは虐待を受けたようなケースでは、健康な心を取り戻すのは容易ではない。

 過去のトラウマ(心的外傷)を有力原因とする多重人格障害は映画でもよく取り上げられる。淑女が娼婦(しょうふ)になったり、少女が残虐な少年に変装したりする奇抜なストーリーもあった。『告発』(1994年)で、看守の虐待を受けてトラウマを持った囚人役だったケビン・ベーコンが、最近の『スリーパーズ』では、逆に少年をレイプしてトラウマを与える役を演じた。

 スピルバーグ監督の『カラーパープル』(85年)は、親による性的虐待もテーマにしている。後に『天使にラブソングを』で修道尼を元気づける陽気なクラブ歌手を演じるウーピー・ゴールドバーグが、子供の頃に義父にレイプされ、夫の愛人の世話までさせられても、別れ別れになった妹との絆(きずな)を支えに生き続ける女性の半生を演じている。暴力的な夫のひげをそりながら、かみそりでのどをかききりたい衝動にかられる場面が印象的だった。

 いじめは文化的後進国だけの現象かと思っていたら、英国でも毎年十人を超える学童の自殺例が報告されている。その英国では「ストレスは個人の問題ではなく、組織の責任者の管理の失敗である」との考えが提唱されている。

 車のタイヤのように、一方的にすり減らされるだけの受動的な存在が人間ではない。  逆境にあっても、一筋の希望や周囲の支えが立ち直る契機になることを『カラーパープル』は教えてくれた。

 ストレスを除去し、周囲から支えられ、ストレス対処能力を高めるという三段構えの対策が望まれている。

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