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眠り病◆難病なのに理解されず


中日新聞朝刊 2006.06.9


 「ナルコレプシー」という病気をご存知でしょうか?突然、睡眠発作が起こり、深く眠ってしまう病気です。時や場所を構わず眠るので、仕事に支障をきたしたり、「怠け者」などと誤解されがちです。発症率は二千人に一人。日本人は六百人に一人で、世界一多いと推定されています。


 映画「マイ・プライベート・アイダホ」(1991年、アメリカ)でリバー・フェニックスが演じた主人公は、この病気をかかえたゲイの若者です。 十二歳のときに母親に捨てられ、故郷アイダホからポートランドに出てきて、体を売って生活していました。緊張するとすぐに眠ってしまうので、客のひんしゅくを買ったりします。この青年が、キアヌ・リーブス演じる若者と出会い、二人で母親捜しの旅に出かけます。


 ナルコレプシーの患者さんには、寝入りばなや起きがけに夢と現実の中間のような生々しい幻覚がよく現れますが、この映画でも、アイダホの風景が幻想的に描かれ、効果を高めています。さまざまな葛藤や失意を内に秘めながら、無邪気な幼児のように眠る主人公の姿が、美しくも悲しい作品でした。 ジェームス・ディーンの再来と期待されていたリバー・フェニックスは、この映画の公開から二年後、薬物の過剰摂取により二十三歳の若さで世を去りました。


 ナルコレプシーは1880年にフランスで発見され、長い間原因不明でしたが、米国在住の日本人研究者によって脳内でオレキシンという物質を出す細胞が減少していることが解明され、これまで対症療法にとどまっていた治療の新たな道が開けました。


 中枢刺激剤で症状は軽減されますが、この病気と付き合っていくのは大変です。なのに、障害者自立支援法の対象になっていません。我が国のナルコレプシーの患者さんは、治療の難しさと社会の認知の乏しさという二重の不幸を味わっています。

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