神に選ばれし無敵の男(2001年 米国)
- kayukawa-clinic
- 6月3日
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愛知保険医新聞刊
実在した人物ハヌッセンはワイマール期に活動したユダヤ人の手品師だった。ゲッペルスとも交流があり、ヒトラーお抱えの預言者としても活躍し、ヒトラーの演説指導もしたという。ナチス政権誕生時には、『オカルト省』の設立まで画策していたという。
1932年、ポーランド東部の小さな町。鍛冶屋のユダヤ人青年ジシェは、レストランでユダヤ人だと馬鹿にされ乱闘騒ぎを起こす。弁償できない彼は、怪力ショーで賞金を稼ぐ。それを見ていたバライエティ業界にスカウトされる。彼の雇い主はハヌッセン。ドイツの有力者たちが集うベルリンの“神秘の館”で、怪力ショーを始めるジシェ。千里眼のハヌッセンと怪力のジシェのコンビは、ナチスの中枢に影響力を持ち始める。だがジシェはやがて出自に悩み、ステージでユダヤ人であることを告白する。観客から罵倒されたが、翌日からジシェの舞台は現代のサムソンと話題を呼び行列ができるほどの人気に。しかしユダヤ人排斥運動は次第に激しさを増していく。そんな時、ハヌッセンも実はユダヤ人であることが明らかとなる。野望達成直前にして、自らの生涯を終わらせるハヌッセン。ジシェは、密かに憧れを抱いていた女性ピアニストとの別れを悲しみつつ、帰郷。ジシェは使命感を胸に、民衆にこれから迫りくるナチスの脅威を呼び掛けるが、誰も相手にはしてくれなかった。
権力に取り入り一世を風靡したつもりでも、所詮は道化師。時代に迎合した生き方では歴史の藻屑となって消え去るだけである。預言者やオカルトが跳梁跋扈する時代は、ファシズムの前夜であることを教えた作品でもある。
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