障害 ◆周囲の視線に負けない

April 21, 2006

中日新聞朝刊 2006.04.21

 

 障害のある人と話したり、手紙のやりとりをしたりすると、感性の鋭さ、人の評価の的確さにしばしば驚かされます。脳性まひの人から「あの先生、教授らしいけど、患者の気持ちは分からないみたい」と聞いたときには、肩書にとらわれない無垢(むく)な心が真実を見抜くのかと思いました。
 そうした障害児を持つ親御さんも、底抜けに明るかったり、職場で群を抜く業績を上げていたり、ひと味違う何かを感じることも少なくありません。
 「ギルバート・グレイプ」(1993年)は、今をときめくハリウッドの大スター、レオナルド・ディカプリオと、彼が実生活でも兄貴分と慕うジョニー・デップとの共演です。
 知的障害のあるレオ君は、高いところが大好き。町で一番高い煙突に登って、町中大騒ぎになり、レオ君は警察に身柄を拘束されてしまいます。母親は、夫の死後、過食で象のように太って、身動きのとれない体になっていたのですが「私の子を返せーっ!」と警察に怒鳴り込みます。町の人たちの白い目を浴びながら、堂々とレオ君を連れ帰る姿は感動的です。多くの障害児の親御さんが乗り越えてきた「周囲のまなざし」を、レオ君の母親も乗り越えたのです。
 ジョニー・デップが演じた兄も、家族を守る思いと自分の夢との間で揺れる、笑顔が魅力的な青年でした。
 「ギルバート・グレイプ」は、社会の中で障害者が生きることの意味、自立することの意義、それを支える家族のきずな、地域の人々のやさしさなど、今日の日本で失われつつある多くのことを教えてくれます。
 四月に施行された障害者自立支援法は、障害者本人や家族の負担を高め、社会参加を困難にするとして「自立阻害法だ」と激しい批判がわき起こっています。この法律にかかわった官僚や国会議員は、この映画を見て、障害者や家族が社会にどれほど大切な存在であるかを認識しなくてはいけません。

 

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