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第19回 「ショーシャンクの空に」(米国 1994年)

 イソップ寓話集に「善と悪」と題する小話がある。 善は非力であったので、悪に追いたてられ、天に昇って行った。そしてゼウスに人間の所に留まっているにはどうしたらよいかと尋ねたところ、皆一緒になって人間を訪ねるのではなく、一人一人で行くように、との答であった。このため、悪は人間の近くにいて絶えず襲ってくるが、善は天からゆっくりと降りて来るのだ。 1947年、ショーシャンク刑務所。銀行の若き副頭取、アンディ(ティム・ロビンス)は、妻と間男を殺した罪で刑に服した。誰とも話さなかった彼が1ヶ月後、“調達係 ”のレッド(モーガン・フリーマン)に、鉱物採集の趣味を復活させたいと言い、ハンマーを注文する。49年、アンディは屋根の修理作業に駆り出された時、監視役の刑務主任ハドレーが死んだ弟の遺産相続問題で愚痴をこぼしているのを聞き、解決策を助言する。彼は作業中の仲間たちへのビールを報酬に、必要な書類作成を申し出た。取り引きは成立して囚人たちはビールにありつき、彼らはアンディに一目置くようになる。アンディがレッドに女優リタ・ヘイワースの大判ポスターを注文。ノートン所長はアンディを図書係に回すが、これは看守たちの資産運用や税金対策の書類作成をやらせるためだった。アンディは州議会に図書予算請求の手紙を毎週一通ずつ書き始める。6年目に、ついに200ドルの予算を約束する返事と中古図書が送られてきた。アンディはその中にあったレコード『フィガロの結婚』を放送し、囚人たちを和ませる。63年、図書室の設備は見違えるように充実。所長は、囚人たちの野外奉仕計画を利用して、土建業者たちから手に入れた賄賂をアンディに“資金洗濯”させていた。その後のある定期検査の日。アンディの房は無人だった。マリリン・モンローからラクエル・ウェルチへ代替わりしていたポスターを剥がすと、その壁には深い穴が開いていた。アンディはあのハンマーで19年間かかって穴を堀り、嵐の晩に脱獄に成功したのだ。アンディは所長たちの不正の事実を明るみにさらし、ハドレーは逮捕され、観念した所長は自殺。やがてレッドは仮釈放になるが、外の生活に順応できない。彼はアンディの手紙を読み、意を決して今はメキシコで成功している彼の元を訪ねるのだった。 ************* 善は急にはお目にかかれないが、悪には毎日見舞われるという教訓だ。私の最も好きな作品の一つである「ショーシャンクの空に」。冤罪で刑務所送りにされたが、粘り強く刑務官や刑務所長の信頼を集める。入所者の処遇を改善し受刑者に希望が芽生え始める。前人未到の脱獄に成功したアンディは、最後には刑務所長の不正まで暴くのであった。自由を勝ち取るまでの、息の長い闘い。異動や配置換えが不当だと感じることはあっても、自信と希望を持ち続けることが肝心だ。

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