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『パパの木』 (濠太剌利・仏蘭西 2010年)

  • 執筆者の写真: kayukawa-clinic
    kayukawa-clinic
  • 2010年6月1日
  • 読了時間: 2分

更新日:2024年11月5日






© photo : Baruch Rafic - Les Films du Poisson/Taylor Media - tous droits reserves - 2010

  島国の日本人には、家一軒丸ごとトレーラーに載せて大平原を爆走する光景は驚嘆だ。今回紹介する「パパの木」(原題はThe Tree)は大地の巨木の傍に居を構え「大草原の小さな家」のような牧歌的展開かと思ったら大間違い。   父親がトラックの運転中に心臓発作で急逝。大黒柱を失った家族は喪失感に包まれ途方に暮れる。妻は絶望と抑うつで無気力に陥る。妻役は仏蘭西を代表する女優シャルロット・ゲンズブール。勘の鋭い娘は、あどけなさを持ちながらも時に大人の心理を鋭く見抜く。どこにでもいる普通の家族を襲った父の死。その悲哀を克服していく過程がリアルだ。題名がなぜ「パパの木」か。作品名に象徴される家の傍に聳えるイチジクの樹が急逝した父の生まれ変わりと娘は固く信じている。高校生の長男のバイト先の親方は、寛大な人柄で水道を直したりしているうちに、母親と恋仲になる。夫を失った女性の再生には男が必要だが、娘は継父を受容しない。家を壊しそうな勢いのイチジクを根絶するか、亡き父の生まれ変わりとして存続するか。母と娘の壮絶なバトルも展開される。父を失った妻、子供たちが葛藤しつつ生きる姿は感動的だ。   最愛の人との死別は避けられない、しかもそれが突然訪れることもある。全編温かな空気に満ち溢れており、生きることへの喜びが込められている。   人口減社会に突入した日本。「亭主元気で留守が良い」などという間抜けなCMはもう流行らない。

■レイティング:G ■公式サイト:http://papanoki.com/ ■配給・宣伝:エスパース・サロウ

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