いま、ボリウッドが面白い。原題は”3 idiots”、3馬鹿トリオ。とはいえインド最高の工科大学ICE200名の中での話だ。3人の入学には、インド社会を象徴する背景があった。写真家志望なのに父親に技術者の道を強要されたフィルハーン、貧困家庭の再生を託されたラージュー、そして天才ランチョーだ。ランチョーは富豪に使える庭師の子弟だ。子供の頃から高等数学を解いてしまう神童で、学歴がない富豪の息子に学士号を取得させるため替え玉入学させられたのだ。いつも一番を目指すガリ勉で狡猾なチャトウルが、ランチョーの後塵を拝し、しかも辱めをうける。 ICEの卒業生を一流企業に送り込むことが大学の使命と信ずる単純な学長は、3馬鹿トリオの逸脱を理由に退学させようとするのだが、その都度ランチョーの機転に阻まれる。卒業と同時にランチョーはぱたりと消息を断つ。 卒後十年、チャトウルからフィルハーンにメールが入る。10年前に約束した9月5日の屋上対決だった。大企業の副社長に昇進したチャトウルは、ランチョーを完全に出し抜いたつもりで、十年ぶりにランチョーに遭いに行くのだ。フィルハーンを写真家に、ラージューを技術者にしたランチョーのその後を知りたくて、奥山に出かけるのだ。 「青年は世俗的立身出世で、人生選択をしてはいけない」「なせばなる」世界一の人口を誇るインドにはまだ希望があるようだ。子供をエリートにと望む保護者だけではなく、閉塞社会日本のすべての人々必見の作品だ。
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