二〇一四年八月十一日、パーキンソン病の初期にロビン・ウィリアムズが六十三歳で突然旅立った。僕の大好きな俳優だった。天才落語家桂枝雀を想起させる大胆でハイテンションなマシンガン・トーク。比類なき言葉の魔術師だった。見事な即興、物真似、声真似で知られ、『グッドモーニング, ベトナム』でのDJ役、『ミセス・ダウト』での女装役、ディズニー・アニメーション『アラジン』での変幻自在な魔人ジーニーの声優など、実に多芸多才だった。一方では『いまを生きる』では熱血教師を、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』では精神科医を演じ、少年の発達や自立をテーマにした作品も良かった。『ストーカー』は鬼気迫り、『ガープの世界』は、独特の母子関係だった。 医療モノでは、『パッチアダムス』、『レナードの朝』が有名だ。『パッチアダムス』は、癌の患児たちに、心理免疫療法とでも云える笑いの効果を展開して、小児癌治療に一筋の光明をもたらした。手品や音楽を患者さんに披露する医師の心とも共通する作品だった。『レナードの朝』は、不治の病と医師達が匙を投げた嗜眠性脳炎患者にL-DOPA療法で、奇跡的な目覚め(Awakenings)をもたらした奇抜な医師を演じていた。主演はレナード役のデニーロだった。
「言葉と理想で世界は変えられる」と語ったのに、自己の精神世界は変えられなかったのか。無念の自殺だ。一俳優に米国大統領オバマの追悼談話というのも異例だ。