自閉症への理解進んだが…

December 1, 2019

朝日新聞朝刊 1999.9.11

 

  母親を見てもほほ笑まない。目が合わない。物を目で追わない。自閉症という発達障害が提唱されたのは、まだ半世紀ほど前だ。映画『レインマン』(1988年)は自閉症への一般の理解を飛躍的に前進させた。
 トム・クルーズ演ずるクルマの並行輸入業の青年は、父親の遺言状をきっかけに、長い間入院したきりの自閉症の兄がいたことを知る。雨の日には外に出ないと決めているレインマンの兄をダスティン・ホフマンが演じた。
 自閉症について映画では、こう説明される。
 「昔は痴呆症(ちほうしょう)と混同されたが、知覚のインプットと処理過程、意思の疎通と学習能力に障害があり、感情の表現と理解ができない。外界が怖いので決まった儀式的行動に逃げ込む。睡眠、食事、歩き方など、日常生活のパターンが破られるのを嫌う」

 父の遺産は、兄の主治医に託された三百万ドル。事業に行き詰まっていた弟は遺産目当てに兄を連れ出し、父が残した49年型ビュイックでシンシナティから自宅のあるロスに向かう。数日間の旅の途中、弟は兄の驚くべき記憶力によって、秘められていた家族の歴史を次々に知る。弟は急速に自閉症への理解を深め、兄を親友(メーンマン)と呼ぶようになる。
 睡眠研究に身をささげた精神科医ウィリアム・デメント博士は、野獣から襲われないように身を寄せ合って眠ったのが家族の起源だという興味深い仮説を立てた。
 最近では、配偶者のいびきで眠れないと寝室を隔てるケースも増えている。娘や息子も早い時間から自室にこもりがちだ。眠りが家族を結合させる時代ではない。家族の関係も危機に直面している。

 天才的な自閉症患者もいるにはいるが、現実には知的障害を合併している重篤な人が少なくない。才能があっても、痛みは傷みだ。
 コミュニケーションが取れない病だけに、治療とともに発達教育を心掛けている。

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