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『ロイヤルアフェア 愛と欲望の王宮』(丁抹 2012年)


 007・カジノロワイアルの悪役をご記憶の方はおられるだろうか。そのマッツ・ミケルセン演ずる優秀な医師にして、王室に取り入り黒幕となり、国家近代化を目論むが、悲しくも潰えさる。時は米国独立宣言の頃、仏蘭西革命の十年余り前、十八世紀後半の丁抹(デンマーク)が舞台だ。   十八世紀後半、精神病の丁抹国王クリスチャン七世の侍医となった野心家のドイツ人ストルーエンセ。王と心が通じ、プロイセン王と綽名をされながら、国家の改革に奔走する。しかし、下半身は王妃カロリーネと禁断の恋に落ちる。アフェアーとは不義密通の英語だ。   モンテスキュー、ヴォルテールの啓蒙思想を信奉し、国王を操り摂政として改革を推進する。しかしながら、不満を募らせた枢密院の保守派貴族のクーデターで断頭の刑に処される。改革即反動は歴史の弁証法だ。   丁抹では誰もが知る実話をもとに、王と王妃、そして侍医の運命的な三角関係を描く壮大な歴史劇で、迫真の宮廷内権力争いを描いた。 王政⇒共和制⇒民主制⇒?と、国家の統治形態は変遷しても、権力にたかる官僚や貴族の構図は二十一世紀になっても変わっていない。   確かに小林多喜二が受けたような拷問はなくなった。農民が貴族に搾取・収奪されることもなくなった。江戸⇒明治⇒大正⇒昭和⇒平成と年号は変わっても、天皇家を担ぐ国粋主義の輩が、跳梁跋扈している。こんな国が、存続出来るのか。甚だ心許ない。そんな感慨を抱かせる名作だ。 

■公式サイト:http://www.royal-affair.net/main.html ■配給:アルバトロス・フィルム 

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