旅人は夢を奏でる(フィンランド 2012年)


 「旅人は夢を奏でる」と題する作品は、とても地味なロードムービーだ。生みの親でも育ての親でも父親は母親には叶わない。  肥満の老人が突然旅に出る。ピアニストとして成功を収めたティモが深夜に帰宅すると、玄関前に1人の老人が大いびきで眠り込んでいた。ティモが三歳の時に家族を捨て三十五年間音信不通だった父親のレオだった。病的肥満で歩くのも大変な父親レオ。インスリンの自己注射も肌着の上から行う場面には驚かされる。養父も養子の息子も糖尿病だ。糖尿病も生活習慣で悪化する。肥満の養父の大いびきは睡眠時無呼吸症の典型的症状だ。ちなみにいびきの研究では世界の先端を行くのが芬蘭(フィンランド)だ。 実は生きていた姉、祖母、そして生物学的母親に遭わせる旅だった。さらに別居中の妻子との再会も提案する。レオが間に入り、夫婦の絆は復活する。明け方、レオがタクシーを呼び黙って出ていこうとした行き先は、レオが度々電話をかけていた厩舎のある村だった。レオを追いかけるティモ。そこには、ティモの生物学的母が暮らしていたのだった。  極東の島国日本から遙か遠く離れた北欧。瑞典(スウェーデン)映画はベルイマン以来馴染みがあるが、芬蘭(フィンランド)映画は珍しい。軟派も即興音楽も挿入しながら、奏でたのは果たして夢か音楽か愛か。問いかけるテーマは重い。ヒトは死期が近いことを悟ると罪滅ぼしの旅に出るのだろうか。

『旅人は夢を奏でる』 2014年1月11日(土)、シアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開 (C)Road North 配給:アルシネテラン

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