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企業内セクハラ、日米で違い

朝日新聞朝刊 1999.6.19

 「ブスだね」「太ったね」が禁句なのは常識だが、「最近きれいだね」「どうして髪切ったの」「まだ結婚しないの」と、つい口にする男性はまだ多い。  セクシュアル・ハラスメントは、性的不快感を与えることで、被害者の受け止め方の問題とみられがちだが、正確には、権力をたてに性的関係を強要することと定義される。新入社員に「不倫しなさい」と言い放つオジサンに至っては「極刑もの」だ。  最近では、厳しい採用手控えを突破し、ある企業の総合職に迎えられた新入社員が、研修期間中に上司のセクハラに遭い、世界でも最先端と評判の経営戦略とのあまりの落差に、腹を立てて退社したという例まである。  セクハラを許容する企業の体質が裁判上で問題にされたのは米国の話だが、国内の大学や職場では、横行するセクハラに苦慮している。  映画『ディスクロージャー』(1994年)は、セクハラ問題で一歩先をいく米国の作品だ。仮想現実のソフトを組み込んだ装置を開発中のマイケル・ダグラスの勤める会社に、元恋人だったデミ・ムーアが上司として着任する。  魅惑的な上司に迫られるが、男性はすんでのところで思いとどまる。ところが翌日出社すると、男性がセクハラをしたと問題になっている。男性は司法の場に訴え出る。  企業合併をめぐる陰謀が絡んできたり、パソコンネットの活用や、仮想現実の映像が駆使されたりと、最先端映画の趣も強い。セクハラ訴訟の方は、性的内容に踏み込む証言が次々に飛び出し、耐えながら同席して夫を支える妻の姿も印象的だった。  女性がセクハラをするほど、雇用の機会均等が浸透していない日本には縁遠いストーリーだ。しかし、少し現実に戻って、女性が被害者のセクハラ訴訟があったとしよう。同席して妻を支える夫の姿が、なかなか像を結ばない。どうしたものだろうか。

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