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自然との対話 家族のきずな

執筆者の写真: かゆかわクリニック院長 粥川裕平
かゆかわクリニック院長 粥川裕平
2025年3月3日
読了時間: 2分

更新日:6月16日

モンタナの川辺でフライフィッシングをする兄弟と雄大な自然風景

朝日新聞朝刊 1999.5.15



モンタナ州ミズーラの小さな川の合流点。澄んだ風景の中で幼い兄弟は、長老派教会の牧師である父からフライ・フィッシングを伝授される。

ロバート・レッドフォード監督の『リバー・ランズ・スルー・イット(A river runs through it) 』(1992年)は、フライの聖典とされるノーマン・マクリーンの回顧録の映画化だ。

1926年春、クレイグ・シェーファー演ずる兄がダートマス大を卒業して六年ぶりに帰郷する。ブラッド・ピットが演じる弟は、地元で釣りの記事を書く記者になっている。

兄は自分が教職に就くことになったシカゴで、大きな新聞社の記者になるように弟に勧める。弟は「一生、モンタナで暮らす」と断る。酒を浴びるほど飲み、かけ事で借金を作り、生活が崩れかけていた弟を、何とか救い出そうとする兄だが、弟がフライを投げる姿を見て、「流れの中の岩の下のことば」を聞き取れるほどに自然に溶け込んでいると感じて、あきらめる。

父は教会での最後の説教で、弟について語る。

「完全に理解できなくても、完全に愛することはできる」。それが家族なんだと。

まったく興味のなかった人も、この作品を見るとフライを投げたいと感じるだろう。家族の愛と、川と丘の風景が心に染みる作品だった。最近の『モンタナの風に抱かれて』といい、レッドフォードは、ハンサムでスマートなだけではない。いい映画を作る。

不眠症で月に一度外来を訪れる男性は、奥さんに死に別れて十年、息子家族と同居している。好きだったゴルフも飛距離が落ちてつまらなくなった。寂しさを紛らわそうと十年飼っていた犬も死んだ。

もう別れのつらさを味わいたくないと、最近は植物と話をするようになった。「草木と心をともにしています」。しみじみとそう語る姿を見て、老境の高みとはこういうものなのだと、教えられた気がしている。




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