中日新聞朝刊 2006.05.19
ドリームジャンボ宝くじが発売されています。「一等が当たったら家を建てて、世界旅行も…」と夢見る人も多いでしょう。こうした一攫千金を日常的に夢見ているのが、ギャンブル好きの人たちです。
オスカー俳優のリチャード・ドレイファス主演の「のるかそるか」(一九八九年 アメリカ)は、ギャンブルの本質を描いた作品です。
主人公は競馬好きのタクシー運転手。大穴狙いで負け続けているのですが、たまたま手に入れた裏情報を頼りに「これで負けたら競馬をやめる」と全財産をつぎ込んで、見事に的中。そこから幸運の波が訪れます。競馬は、出走馬の能力や調子、レースの展開などを推理していくゲームなのに、彼は「馬がウインクした」といった理由で大金をかけ、ことごとく的中してしまうのです。
競馬場内の金持ちが集うクラブにも出入りできるようにもなります。でも、あこがれていた場で出会う紳士たちは、あんまり幸せそうじゃない。むしろ、お金のない友人や妻が輝いてみえてくる。そして運命の大勝負の行方は…。
主人公と一緒に、手に汗握る気分になれる映画です。ギャンブルの疑似体験といえるでしょう。
自分の推理や、かけひき、勇気によって、一瞬で大金を手に入れたり失ったりするのがギャンブル。その体験は、人間の脳の快楽中枢や新規探究心を刺激します。その魅力から抜け出せなくなるのが、ギャンブル依存症です。一攫千金なんて起きるわけがないと分かっていてもやめられず、より強い刺激を求めてしまいます。「分かっちゃいるけど、やめられない」は、精神疾患の「強迫性障害」にもつながる病理です。
やはりギャンブルは年数回とか、月に一度ぐらいの頻度で、お小遣いで楽しめる程度にとどめたいものです。パチンコやマージャンで「一日で十万円もうけた」「三日で百万円負けた」といった賭博性の強い世界に没入すると自己破産や一家離散の危機すらあるのです。
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