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クロワッサンで朝食を(仏蘭西・エストニア・白耳義 2012年)


 老いは生物にとって必然だ。銀幕の名優も例外ではない。一九二八年生まれのジャンヌ・モローの存在感溢れる作品が「ティファニーで朝食を」をもじった作品(原題は「パリの淑女」)だ。  エストニアで子育てと母の看病に追われ初老期に入ったアンヌは、二年間の介護で母を見送る。抜け殻のようになったアンヌであったが、ある日、パリで家政婦としての仕事のオファーがかかる。 アンヌは愛する母を失った悲しみを振り切るかのように、花の都パリへ旅立つ。アンヌを雇ったのは、老婦人の近くでカフェを経営するステファンだった。ステファンはフリーダの元愛人で、カフェ開店の援助への恩返しの気持ちも働いたのであろう。  アンヌの介護の相手は、高級アパートに独居する辛辣で孤高の老婦人フリーダ(ジャンヌ・モロー)だった。フリーダは多量服薬による自殺企図の既往があり薬棚には鍵が掛けられていた。フリーダは美味しいクロワッサンの買い方も知らないアンヌに冷たく当たる。  パンはパン屋さんで買うものなのだ。  昔エストニアから出てきたフリーダはアンヌに、少しずつ心を開き始める。「古里は遠きにありて想うもの」、郷愁(ノスタルジア)は捨てがたい。「黒衣の花嫁」が印象的だったジャンヌ・モローが老ボス猿の様になっていた。人は年を重ねる度に苦労も皺も増える。美醜を超越した世界だ。独居老人大国日本、家政婦も雇えなければどうするのか。

『クロワッサンで朝食を』 © TS Productions - Amrion Oϋ - La Parti Production - 2012 2012年ロカルノ国際映画祭 エキュメニカル賞受賞 セテラ・インターナショナル創立25周年記念作品 監督・脚本:イルマル・ラーグ 共同脚本:アニエス・フォーヴル、リーズ・マシュブフ 撮影:ローラン・ブリュネ 衣裳:アン・ダンスフォード 美術:パスカル・コンシニ 音楽:Dez Mona/ジョー・ダッサン「メランコリーというのなら」 出演:ジャンヌ・モロー『死刑台のエレベーター』、ライネ・マギ、パトリック・ピノー 原題:Une Estonienne à Paris /2012/フランス=エストニア=ベルギー/フランス語・エストニア語/95分/ヴィスタ/日本語字幕:古田由紀子/協力:ユニフランス・フィルムズ/配給・宣伝:セテラ・インターナショナル www.cetera.co.jp/croissant/ 

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