世俗の幸福を超越した知恵朝日新聞朝刊 1999.7.3 欲望が満たされないと不安になるし、富や愛や健康を失うと憂うつになる。世俗の幸福は、何か一つが欠けただけでもストレスになるのが人間だ。とはいえ、不登校で自室にこもっていた若者が突然、解き放たれたように人生の意味や世界の平和を語り出すと、精神科医...
精神病ケア、現状は家族頼み朝日新聞朝刊 1999.7.10 「地球の底から生まれて来た。破滅しそうな地球を救うために自分は神になった」。妄想型精神病で長期入院中の五十代の男性患者はこう話す。 入院する前は、家業の鉄工所を手伝っていたが、父親が亡くなって工場を閉鎖してからは、仕事に戻る気もない。 ...
仕事と別のよりどころ必要朝日新聞朝刊 1999.7.17 常識的な理解の範囲を超える心の働きが、増えているように思えてならない。冬型うつ病は光が、夏型うつ病は温度が原因という大胆な学説を提唱した米国精神保健研究所のトーマス・ウエア博士が十年ぶりに来日し、新しい治療法を巡って話し合う機会があった。趣...
戦争で傷つかぬ心は対象外朝日新聞朝刊 1999.7.24 戦争による極限状況を体験した人々の心理を検討し、欧米では、戦争神経症とか砲弾ショックという病名が提唱されていた。現在の外傷後ストレス障害(PTSD)の前駆的な研究だった。 PTSDは、生死にかかわる恐怖を体験したり目撃した後、心が傷つき...
現実には難しい後遺症脱却朝日新聞朝刊 1999.7.31 ロバート・レッドフォード監督・主演の『モンタナの風に抱かれて』(1998年)は、馬と少女の傷ついた心の回復の物語だ。レッドフォードは馬にささやく人、ホース・ウィスパラーと呼ばれる現代のカウボーイを演じる。 ...
事故のストレス 家族にも朝日新聞朝刊 1999.8.21 仕事の後、ほろ酔い気分で家路についた会社員が駅の階段で転倒し、せき髄損傷の障害を負った。実直な性格で、鋭い頭脳の持ち主だ。好きな山歩きも、釣りもゴルフも出来なくなった。トイレや入浴も大変な苦労だった。本人ばかりか、奥さんや家族のストレスも大...