陽気な挑戦者◆困難もさらり受け止め
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中日新聞朝刊 2006.08.11
患者さんから、お勧めの映画を教えてもらうことがしばしばあります。統合失調症と長年付き合っているAさんが、ある日の外来で勧めてくれたのが「クール・ランニング」(1993年、アメリカ)。ジャマイカのボブスレーチームを描いた作品です。
ジャマイカといえば、レゲエで知られる常夏の島国。氷上のボブスレーとは縁もゆかりもなさそうですが、実際に1988年のカルガリー冬季五輪に初出場し、続くリレハンメル冬季五輪では、十四位に食い込んで話題を呼びました。映画は、カルガリーへの挑戦を楽しいドラマに仕上げています。
陸上の短距離選手だったデリースは、五輪選考会で本命視されながら、隣コースの選手ジュニアの転倒に巻き込まれ、夢を絶たれます。でも、すぐに次の目標を見つけました。脚力が要求されるボブスレーでした。かつての金メダリスト・アーブがジャマイカですさんだ暮らしをしていることを知り、粘り強く説得してコーチを引き受けてもらいます。
チームに集まったのは、デリースの親友のサンカ、陸上のライバルだったユル、そして転倒事故で二人の五輪出場の夢を絶ったジュニア。素人ばかりの集団ですが、恵まれた素質が猛特訓で開花していきます。出場費用もなんとか解決しました。
厳寒のカルガリーに来た選手たちは、強豪国の選手たちから冷笑を浴びます。最初のレースは悲惨な成績でした。でも「強豪のまねじゃなくて、自分たちの流儀でやろうぜ」と開き直り、見違えるような好成績で予選を突破しました。戦いを通じて、若者たちは成長していきます。今まで強い父親の言いなりだったジュニアも、父親の命令を初めて拒否して競技を続けます。決勝でチームが得たものは、メダルよりもはるかに大きな「誇り」でした。
困難をさらりと受け止め、陽気に挑戦していく若者たちの姿が、元気を与えてくれる映画です。ちなみに、ジャマイカの自殺率(人口10万あたりの自殺者数)は、0.3で、日本の80分の1です。底抜けの楽天性と不屈のチャレンジ精神。私たちに欠けている大切なものを教える作品です。



