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院長コラム
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院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


事故のストレス 家族にも
突然の事故は、身体の機能だけでなく、その人の生き方や楽しみ、そして家族との関係にまで大きな変化をもたらします。脊髄損傷などの重い後遺症は、本人の喪失感や無力感を引き起こすだけでなく、日常生活を支える家族にも大きな負担とストレスをもたらします。
本稿では、映画『ラリー・フリント』を手がかりに、事故によって人生が一変した人間の心理と、それを支える配偶者の姿に焦点を当てながら、「あの時さえなければ」という思いとともに生きる現実について考えます。
2025年1月29日


肝臓先生は精神科とも連携
身体の病は、しばしばこころにも深い影響を及ぼします。とくに慢性疾患や大きな治療を経験した後には、不安や抑うつといった精神的な変化が現れることも少なくありません。こうした心身の相互作用に対して、医療はどのように向き合うべきなのでしょうか。
本稿では、C型肝炎の治療とその後に生じたうつ症状の事例を通して、身体疾患と精神医療の関係を考えます。また、映画『カンゾー先生』に描かれる医師像を手がかりに、現代医療における診療科の連携と、患者を全人的に支える視点の重要性に迫ります。
2025年1月27日


医療と医学 近くて遠きもの
医療は目の前の患者を救うことを使命とし、医学は未知の解明を追い求める。この二つは密接でありながら、ときに大きな隔たりを見せます。ポリオ研究の中断や知的障害医療の停滞に象徴されるように、現実の医療現場では「治すこと」と「支えること」の間で葛藤が生じ続けています。本稿では、アルジャーノンに花束をとグッド・ウィル・ハンティングという対照的な作品を手がかりに、人間の知性と心のあり方、そして医療と医学の関係について考えます。
2024年12月23日


こころの病、まず相談の決断
人生における出来事は、身体だけでなく心にも大きな影響を及ぼす。とりわけ普通の人々は、家族の喪失と葛藤を通して、心の病と向き合う過程を丁寧に描いた作品である。長男の死をきっかけに崩れていく家族関係の中で、次男は抑うつや自殺未遂といった危機に直面しながらも、支えを得て再生への道を歩んでいく。
こうした心の不調は、誰にでも起こり得るものであるにもかかわらず、実際に専門家へ相談するまでには長い時間を要することが多い。祈祷や民間療法に頼り続けた末にようやく医療機関へたどり着く例もあり、心の問題に対する社会的理解は必ずしも十分とはいえない。
精神的な不調は特別な人だけの問題ではなく、生活や人間関係の中で誰もが直面し得る現実である。そのため、早い段階で相談につながることの重要性が改めて問われている。
2024年11月27日


だんらんにっぽん -愛知・南医療生協の奇跡-(日本・2011)
医療は専門家だけが担うものではなく、地域に暮らす人々の関わりの中で支えられていく側面を持つ。伊勢湾台風を契機に誕生した南医療生協は、まさにその象徴的な存在である。大規模災害後の混乱の中で、住民と医療者が手を取り合い、診療所から病院へと発展してきた歩みは、単なる医療機関の成長ではなく、地域そのものの再生の歴史でもあった。映画だんらんにっぽん -愛知・南医療生協の奇跡-は、その過程を支えた無名の組合員たちに光を当てる。そこに描かれるのは、効率や市場原理では測れない、人と人とのつながりから生まれる医療のかたちである。受け身の「患者」から主体的な「担い手」へ――住民参加型医療の可能性を問いかける作品である。
2024年11月26日


糖尿病、心理面の対処が重要
慢性疾患の治療において、身体面の管理だけでなく心理面への配慮が重要になっている。糖尿病は国内でも患者数が多く、生活習慣と深く関わる病気として知られているが、その経過にはストレスの影響が大きいとされる。診断そのものが心理的負担となるだけでなく、食事制限や運動療法といった自己管理もまた、患者に継続的なストレスを与える要因となる。
こうした悪循環の中では、病気そのものの治療と同時に、ストレスへの対処能力を高めることが重要となる。心理的安定が血糖コントロールにも影響を及ぼすことから、医療は身体と心の両面から支えられる必要がある。
映画生きるでは、余命を告げられた中年公務員が、自らの生の意味を見いだし、仕事に打ち込むことで心の再生を果たしていく姿が描かれる。そこには、限られた時間の中でも「どう生きるか」を選び直す人間の力が示されている。
2024年10月31日


統合失調症、社会復帰に援助を
統合失調症は長期的な治療と支援を必要とする精神疾患であり、症状の安定後も社会復帰には多くの困難が伴う。かつては長期入院が主流だったが、「地域で生きる」という理念のもと、脱施設化が進められてきた。しかし、その理想と現実の間には大きな隔たりがある。
映画聖者の眠る街は、退院後に社会の中で生きる統合失調症の当事者の姿を描き、その孤独や葛藤を浮き彫りにしている。医療から離れた後、生活のすべてを自分で担うことになる現実は厳しく、支援が不十分であれば再び孤立に陥る危険もある。
真の社会復帰とは、単に病院を出ることではなく、安心して暮らせる居場所と周囲の理解を得ることにある。医療・福祉・地域社会が連携し、一人ひとりに応じた継続的な支援を行う体制づくりが求められている。
2024年8月21日


障害の受容◆自己の再発見にもなる
障害を負ったとき、人は単に失われた機能を取り戻すだけでなく、新たな生き方そのものを模索することになる。映画『心の旅』(1991年・アメリカ)を題材にしながら、障害の受容とは「能力の回復」にとどまらず、「自己の再発見」であると論じる。
物語では、前頭葉損傷により記憶を失ったエリート弁護士が、幼児のような状態から再び社会に戻っていく過程が描かれる。そこで浮かび上がるのは、地位や能力を失った後に残る人間の本質と、家族や社会との関係の再構築である。
日本においても高次脳機能障害などの後遺症により、社会復帰に困難を抱える人は少なくない。近年は専門的リハビリテーション体制が整いつつあるが、依然として「受容」と「社会的理解」は大きな課題である。リハビリは単なる医療行為ではなく、「全人的な権利の回復」であり、生き直しのプロセスでもある。
2024年8月14日
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