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院長コラム
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院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


障害の理解◆認知を広めた名演技
映画『レインマン』は、自閉症という障害への理解を広く社会に伝えることに貢献した作品である。中古車ディーラーのチャーリーは、父の死をきっかけに、自分には存在すら知らされていなかった兄レイモンドと出会う。自閉症のため施設で暮らす兄を、当初は遺産目当てで連れ出したチャーリーだったが、長い旅を共にする中で、兄の独特な行動や高い記憶力、その背景にある人間性を少しずつ理解していく。やがて幼い頃に自分を守ってくれた「レインマン」の正体が兄だったことを知り、チャーリーの兄に対する見方も変化していく。ダスティン・ホフマンの名演技は、自閉症の人の姿を社会に印象づける大きな役割を果たした。障害を「異質な存在」として見るのではなく、一人の人間として理解し、ともに生きるとはどういうことなのかを考えさせる作品である。
5 日前


庶民の文化◆生き生きとした大衆讃歌
十九世紀のパリを舞台に、芝居小屋や大通りを行き交う庶民たちの姿と、パントマイム芸人バチストと女芸人ガランスの切ない恋を描いた「天井桟敷の人々」。三時間を超える大作でありながら、恋愛映画にとどまらず、庶民の文化と生命力を生き生きと描いた作品です。大道芸やパントマイム、カーニバル、酒場のダンスなど、人々が芸術を楽しみ、仲間の恋を応援する姿が画面いっぱいに広がります。一方で、貴族の決闘や権力にこびる警察、伝統に固執する劇作家たちを風刺し、庶民文化の自由さとたくましさを浮かび上がらせます。ドイツ軍占領下のパリで製作された本作には、祖国の大衆文化への誇りと、戦争下に生きる庶民へのエールも込められているのでしょう。文化とは一部の専門家や権力者だけのものではなく、人々の日常から生まれるものだと考えさせる映画です。
9月8日


医学◆患者さんは教師である
医学の発展は、教科書や研究室だけから生まれるものではありません。目の前の患者さんの病態をつぶさに観察し、そこから学ぶことが、新たな治療法につながります。映画「レナードの朝」は、1969年にニューヨークの神経疾患専門病棟で実際に起きた出来事をもとに、長年嗜眠状態にあった患者たちに一時的な「目覚め」をもたらした医師と患者の物語です。セイヤー医師は、患者さんの反射神経が保たれていることに気づき、リハビリや薬物治療を試みます。パーキンソン病治療薬によってレナードらは劇的に回復しますが、その効果は長く続きません。しかし、レナードの「おれに学べ」という言葉は、医師にとって患者さんこそが医学を前進させる教師であることを象徴しています。治療法を生み出すのは医師だけではなく、患者さんと家族、医療スタッフとの協働なのです。
9月2日


生きがい◆「自分らしく」が一番
「子どもが私の生きがい」と語る人は少なくありません。家族を愛し、子どもの成長を喜ぶことは大きな幸せです。しかし、生きがいを家族だけに求めてしまうと、子どもの独立や死別などをきっかけに、人生の支えを失ってしまうことがあります。映画「ミルドレッド」は、夫を亡くし、子どもたちを育て上げた一人の女性が、家族への愛情と自分自身の人生との間で揺れながら、「自分らしく生きる」ことに目覚めていく物語です。子どもの世話をすることや誰かに必要とされることだけが、生きがいではありません。家族を大切にしながらも、自分自身の人生をどう生きるのか。中年期から老後を迎える人にとって、「自分らしさ」と生きがいについて考えさせられる作品です。
8月25日


教師◆教育の持つ重み再認識
マイケル・ホフマン監督の『卒業の朝』(2002年・アメリカ)は、名門高校の歴史教師ハンダートを主人公に、教師の使命と教育の本質を問いかける作品です。日本で世界史の「履修漏れ」が問題となった2006年の記事では、学校教育のあり方を考える作品として取り上げられています。ハンダートは、野心的で自己中心的な生徒ベルの人間性を高めようと情熱を注ぎますが、彼を立ち直らせたいという思いから成績に手心を加え、結果としてカンニングを見逃すことになります。25年後、実業家となったベルから再びコンテストへの招待を受けたハンダートは、彼の変わらぬ自己中心性を目の当たりにし、自らの過去の判断を振り返ります。「知りつつ犯した罪は大きい」「人はいつか鏡に映る自分を直視しなければならない」という言葉は、生徒だけでなく教師自身にも向けられています。教育とは単に知識や技術を教えることではなく、一人の人間の成長を支える営みです。本作は、教育の持つ重みと醍醐味を改めて考えさせる映画です。
8月18日


大学◆大人の入り口での試行錯誤
『ハイヤー・ラーニング』(1995年・アメリカ)は、名門大学を舞台に、若者たちが差別、性、友情、暴力、アイデンティティーなどの問題に直面しながら、大人への入り口で試行錯誤する姿を描いた作品です。「黒人のスピルバーグ」とも呼ばれるジョン・シングルトン監督は、大学という社会の縮図を通して、現代アメリカが抱える人種対立や性差別、若者の孤独を浮かび上がらせています。黒人学生への差別に憤るメリック、ネオナチに傾倒していくレミー、性暴力をきっかけに社会運動へ向かうクリスティ。それぞれが傷つき、迷いながら自分の居場所を探します。やがて大学で起こる銃乱射事件は、「高等教育」というタイトルそのものに重い問いを投げかけます。大学とは単に知識を学ぶ場所ではなく、人間として成長するための試行錯誤の場でもある――そんなことを考えさせる映画です。
8月11日


統合失調症◆家族は見守る姿勢持って
『こわれゆく女』(1974年、アメリカ)は、ジョン・カサベテス監督による名作で、統合失調症を抱える一人の主婦と、その家族が直面する苦悩をリアルに描いたヒューマンドラマです。夫や子どもを深く愛しながらも、自らの感情や行動を制御できず苦しむメイベルと、彼女を支えようとしながら戸惑い、疲弊していく夫ニックの姿は、精神疾患が本人だけでなく家族全体に大きな影響を及ぼすことを教えてくれます。主演のジーナ・ローランズとピーター・フォークの迫真の演技も高く評価され、精神疾患への理解を深める作品として現在も語り継がれています。本作は、治療だけでなく、家族が本人の苦しさを受け止め、焦らず見守ることの大切さを問いかける映画です。
8月4日


なぞ解き◆はかなさを醸し出す
『めまい』(1958年)は、アルフレッド・ヒチコック監督が手掛けた心理サスペンスの最高傑作の一つである。元刑事ジョンは、高所での事故による心的外傷から高所恐怖症に苦しみながら、旧友から依頼された妻マデリンの尾行を引き受ける。しかし不可解な出来事が続き、恋愛、死、そして巧妙な殺人計画が絡み合う中で、事件の真相が明らかになっていく。本作は、サスペンスとしての完成度だけでなく、トラウマや恐怖症、夢、無意識など精神医学的テーマを巧みに取り入れた作品としても高く評価される。認知行動療法を思わせる恐怖症克服の描写も印象的であり、人間心理の複雑さと愛のはかなさを深く描いた不朽の名作である。
7月28日
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