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院長コラム
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院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


鉄人◆難病にも立ち向かった
スポーツ選手の偉大さは、記録だけでは測れない。映画『打撃王』は、ニューヨーク・ヤンキースの伝説的選手 ルー・ゲーリッグ の人生を描いた作品である。ベーブ・ルースとの強力打線で知られ、二千百三十試合連続出場という不滅の記録を打ち立てたゲーリッグは、努力家で誠実な人格者としても愛された。しかし、栄光の絶頂で彼を襲ったのが、後に「ルー・ゲーリッグ病」と呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)だった。身体が少しずつ動かなくなる過酷な難病に直面しながらも、彼は最後まで気品と誇りを失わなかった。引退式典で語った「私は世界で一番幸せな人間だと思っています」という言葉は、病苦の中でも感謝を忘れなかった彼の人間性を象徴している。映画には ベーブ・ルース 本人も出演しており、往年のメジャーリーグの空気も味わえる。病に敗れなかった精神こそが、ルー・ゲーリッグを永遠のスターにしたのである。
5月28日


失われた記憶たどる心の旅
人は強い身体的・精神的外傷を受けたとき、記憶そのものが途切れたような状態に陥ることがある。しかしその「空白」は単なる喪失ではなく、時間をかけて再構成されていく心の過程でもある。映画『イングリッシュ・ペイシェント』(1996年)は、戦争によって身体と記憶を損なった一人の男性の回想を軸に、愛と裏切り、喪失と執着が砂漠という極限環境の中で交錯していく姿を描いている。過去は消え去るのではなく、断片として現在に侵入し、再び意味を与えられていく。記憶の回復とは単なる「思い出すこと」ではなく、人生そのものをもう一度引き受け直す行為でもある。
2025年2月25日


突然のボケ 家族もぼうぜん
ある日突然、身近な人の記憶が失われていく――それは本人だけでなく、支える家族にとっても深い衝撃を伴う出来事です。
本稿では、アルツハイマー病によって日常が崩れていく現実と、それに寄り添い続ける家族の姿を、映画『ユキエ』とともに描きながら、「記憶」と「情動」、そして支えることの意味を考えます。
2025年2月17日


事故のストレス 家族にも
突然の事故は、身体の機能だけでなく、その人の生き方や楽しみ、そして家族との関係にまで大きな変化をもたらします。脊髄損傷などの重い後遺症は、本人の喪失感や無力感を引き起こすだけでなく、日常生活を支える家族にも大きな負担とストレスをもたらします。
本稿では、映画『ラリー・フリント』を手がかりに、事故によって人生が一変した人間の心理と、それを支える配偶者の姿に焦点を当てながら、「あの時さえなければ」という思いとともに生きる現実について考えます。
2025年1月29日


ダンスでいやす被ばくの苦痛
長い闘病や深い心身の苦痛を抱えながらも、人はなお生きる意味や支えを見出そうとする。長崎原爆による被ばくを経験し、その後も病と向き合い続けてきた人々にとって、日々の生活の中にある小さな喜びはかけがえのないものとなる。慢性的な痛みや不眠に苦しむ中でも、かつて情熱を注いだダンスが心の支えであり続ける姿は、人間の回復力の強さを物語る。
映画スウィング・キッズは、抑圧的な時代の中で音楽とダンスに自由を見出そうとする若者たちの姿を描き、表現活動が心に与える力を示している。現実の医療においても、薬物療法だけでなく、個人の「生きがい」や喜びに寄り添うことが、回復への重要な手がかりとなる。
癒やしは必ずしも劇的なものである必要はない。ささやかな楽しみが、長い苦しみの中で人を支えることもある。
2024年12月20日


幸福のクローバー、まず健康
人の幸福を形づくる要素として、異性、金銭、地位、そして健康が挙げられることがある。これらは「四つ葉のクローバー」にたとえられ、どれが欠けても人生に影を落とす可能性がある。しかし、すべてを満たすことは容易ではなく、多くの人が何らかの不全や喪失を抱えて生きている。とりわけ健康は、他の要素を支える土台であり、失われたときに初めてその重みが実感される。
映画マイ・ルームは、白血病という過酷な現実を通して、家族の葛藤と再生を描く。病は個人の問題にとどまらず、家族関係や人生観にまで影響を及ぼし、それぞれが抱えるわだかまりや距離を浮かび上がらせる。同時に、病を契機として人と人とのつながりが回復し、幸福の意味が問い直されていく。
豊かさや成功が注目されがちな現代においても、まず守るべきものは何か。健康という基盤の上にこそ、他の幸福は成り立っている。
2024年12月18日


障害◆周囲の視線に負けない
映画『ギルバート・グレイプ』は、知的障害のある弟とその家族を支える兄の姿を通して、社会の中で生きることの意味を問いかける作品である。小さな町で暮らす一家は、周囲の視線や偏見にさらされながらも、互いを支え合い懸命に日々を生きている。特に印象的なのは、障害のある息子を守る母親の姿だ。世間の冷たい目に臆することなく、堂々と子を迎えに行くその姿には、家族の強さと深い愛情が表れている。本作は、障害を持つ人々の感性の鋭さや人間理解の深さを描くと同時に、支える家族の苦悩と誇りを映し出す。周囲の評価に縛られず生きることの大切さを、力強く伝える作品である。
2024年12月2日


認知症◆それでも愛されるか
映画『きみに読む物語』(原題:The Notebook)は、認知症という過酷な現実の中で、それでもなお消えない愛のかたちを描いた感動作である。
物語は、記憶を失った妻に対して、夫がかつての恋の記憶を語り続ける場面から始まる。若き日の二人は身分違いの恋に引き裂かれながらも、強い思いで結ばれていく。しかし時を経て、妻はアルツハイマー病により記憶を失ってしまう。夫は日々、過去の物語を読み聞かせることで、失われた絆をつなぎ止めようとする。
本作は、記憶という不確かなものに対して、愛という確かなものがどこまで寄り添えるのかを問いかける。老いと病を超えてなお人を支える感情の深さを、力強く描き出している。
2024年11月29日
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