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院長コラム
—掲載媒体から探す—
院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


性差別 ◆暴力による支配に反旗
『カラーパープル』(1985年)は、20世紀初頭のアメリカ南部を舞台に、黒人女性が性差別やドメスティック・バイオレンス(DV)、人種差別という幾重もの抑圧に抗いながら、自らの尊厳を取り戻していく姿を描いた感動作である。父親からの性虐待、夫による暴力と支配に苦しむ主人公セリーは、自立した女性シャグとの出会いをきっかけに、自分の人生を生きる勇気を取り戻していく。原作はアリス・ウォーカーのピューリッツァー賞受賞小説、監督はスティーブン・スピルバーグ。主演ウーピー・ゴールドバーグの迫真の演技は高く評価された。本作は、DVが人間の尊厳を奪う暴力であることを描くだけでなく、被害者が沈黙を破り、自らの人生を切り開く希望を力強く伝えている。性差別や暴力の問題を考えるうえで、今なお色あせない名作である。
7月1日


ルート・アイリッシュ(2010年 英吉利、仏蘭西、白耳義ほか)
戦争は国家の論理によって正当化されるが、その現場ではしばしば個人の倫理や良心が深く傷つけられる。とりわけ現代の戦争は、国家だけでなく民間企業も関与する複雑な構造を持ち、責任の所在が曖昧になりがちである。映画 ルート・アイリッシュ は、イラク戦争に従事した民間軍事要員の死の真相を追う過程で、戦争の裏側に潜む暴力と隠蔽、そして人間の尊厳の問題を浮き彫りにする。親友の死に疑念を抱いた主人公は、残された記録を手がかりに真実へと迫っていくが、そこにあったのは正義と呼ぶにはあまりにも重い現実だった。戦争の是非をめぐる議論とは別に、一人ひとりの人間が何を見て、何を許し、何に抗うのか――その問いが突きつけられる作品である。
2025年3月5日


エイズ◆すべての人が平等
感染症は単なる医学的問題にとどまらず、社会の価値観や偏見を浮き彫りにする。とりわけエイズは、「死の病」として恐れられてきた歴史の中で、差別や誤解と強く結びついてきた。科学的知識が進んだ現在でも、感染者や同性愛者に対する偏見は根強く残り、治療や生活の質に影響を及ぼしている。
映画フィラデルフィアは、不当解雇をめぐる裁判を通して、尊厳と平等の意味を問い直す作品である。主人公は病によって社会から排除されながらも、法のもとでの平等を求めて闘う。その姿は、自由と平等を掲げた理念が、現実にはいかに脆く揺らぐかを示している。
医療の進歩だけでは不十分であり、正しい知識と社会の理解が伴わなければ、真の意味での「平等」は実現しない。すべての人が等しく尊重される社会とは何かが、いま改めて問われている。
2024年12月11日


心にも傷残す「最古の商い」
人は過去の傷とどう折り合いをつけて生きていくのか。敗戦後の混乱の中で進駐軍相手の売春に身を置き、心に深い傷を負った女性が、自らの現実を「マッカーサーの妻」と語り替える姿は、人が生き延びるために物語を必要とすることを示している。売春は「最古の商い」と呼ばれ、時代が変わっても偏見や葛藤は消えない。映画『モル・フランダース』は、過酷な境遇の中で売春婦として生きざるを得なかった女性が、自らの人生を娘に語り直す物語である。そこには「体は売っても心までは」という切実な願いと、尊厳を守ろうとする強い意志がある。過去をどう受け止め、意味づけるか――本作は人間の再生と自己肯定の可能性を問いかける。
2024年1月11日


第三十二回 最強のふたり(2011年 仏蘭西)
人は、都合のよいときだけ「共にある」ことを望んでいないでしょうか。
映画『最強のふたり』を手がかりに、本稿では障がいとともに生きる人の尊厳と、人と人との関係の本質について考えます。利害や立場を超えて築かれるつながりとは何か――共生社会のあり方を問いかける内容です。
2023年12月20日


第二十八回 マッキー(2012年 インド)
映画『マッキー』は、理不尽に命を奪われた青年が一匹のハエに生まれ変わり、愛する人を守るために巨悪へ立ち向かうという、奇想天外な発想の物語である。インド映画ならではの大胆な設定と最新CG技術が融合し、ユーモラスでありながらも力強い復讐劇が展開される。強大な権力を持つ者に対し、無力と思われた存在が執念と知恵で立ち向かう姿は、「弱者でも抗う力を持つ」という普遍的なテーマを浮かび上がらせる。本作は、単なる娯楽にとどまらず、立場の弱い者の尊厳や可能性を描き出し、見る者に強烈な印象を残す。小さな存在の中にも確かな意思と力が宿ることを教えてくれる作品である。
2023年9月7日


母の身終い(2012年 仏蘭西)
高齢化が進む現代において、「どのように人生を終えるか」という問いは、誰にとっても他人事ではなくなっている。映画『母の身終い』は、余命宣告を受けた母と、その事実に向き合う息子の葛藤を通して、尊厳ある最期とは何かを静かに問いかける作品である。折り合いの悪かった親子が、限られた時間の中で初めて真正面から向き合い、互いの思いを知っていく過程は、観る者に深い余韻を残す。医療や制度だけでは割り切れない「生」と「死」の選択、その中で人は何を大切にするのかを考えさせられる。
2018年6月11日


眠れる美女(伊太利亜・仏蘭西 2012年)
医療は人を救うためにあるが、その限界に直面したとき、私たちは何を選ぶのか。「何より害をなさぬこと」というヒポクラテスの言葉は、現代においてもなお重い意味を持つ。映画『眠れる美女』は、実際にイタリア社会を揺るがした尊厳死問題を背景に、異なる立場の人々の葛藤を描く群像劇である。政治、宗教、家族、個人の意思――それぞれが交錯する中で、「生きること」と「終えること」の境界が揺らいでいく。単なる是非を超え、人間の尊厳とは何かを静かに問いかける作品である。
2018年4月21日
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