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院長コラム
—掲載媒体から探す—
院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


私のすすめる一冊『ホモ・デウス テクノロジーとサビエンスの未来』
ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』は、『サピエンス全史』に続いて、人類がこれからどこへ向かうのかを壮大な視点から描いた一冊である。二十世紀の人類は、飢饉や戦争の克服、幸福の追求を目指してきた。しかし、科学技術の発展によって地球を支配するまでになった人類は、今やAIやアルゴリズムという新たな技術と向き合おうとしている。チェスや囲碁で人工知能が人間を上回ったことに象徴されるように、これまで人間だけが担ってきた知的労働や技能も、アルゴリズムに置き換えられる可能性がある。本書は、人間至上主義からデータ至上主義への転換や、知能と意識の分離といった未来を大胆に予測する。一方で、その未来像が本当に普遍的なものなのか、不死や至福を人類共通の目標にできるのかという疑問も残る。科学技術は人類を幸福にするのか、それとも人間そのものを変えてしまうのか。人類史を俯瞰しながら未来を考えさせる一冊である。
3 日前


私のすすめる一冊『近代日本一五〇年 ―科学技術総力戦体制の破綻』
山本義隆著『近代日本一五〇年 ―科学技術総力戦体制の破綻』は、明治維新から現代までの日本の近代化を、科学技術と国家の関係という視点から捉え直した一冊である。明治政府が西洋の科学技術を導入した背景には富国強兵・軍事目的があり、その後も産官学が一体となって科学技術を推進してきた。その一方で、女工哀史、足尾銅山鉱毒問題、公害、原子力政策など、国力や産業発展の陰で国民の生命や健康が犠牲にされてきた歴史も描かれる。科学技術は人間を豊かにするものなのか、それとも国家の力を増大させるための道具になり得るのか。本書を評価しながら、著者の悲観主義と読後に残る虚無感にも目を向ける。
9月12日


庶民の文化◆生き生きとした大衆讃歌
十九世紀のパリを舞台に、芝居小屋や大通りを行き交う庶民たちの姿と、パントマイム芸人バチストと女芸人ガランスの切ない恋を描いた「天井桟敷の人々」。三時間を超える大作でありながら、恋愛映画にとどまらず、庶民の文化と生命力を生き生きと描いた作品です。大道芸やパントマイム、カーニバル、酒場のダンスなど、人々が芸術を楽しみ、仲間の恋を応援する姿が画面いっぱいに広がります。一方で、貴族の決闘や権力にこびる警察、伝統に固執する劇作家たちを風刺し、庶民文化の自由さとたくましさを浮かび上がらせます。ドイツ軍占領下のパリで製作された本作には、祖国の大衆文化への誇りと、戦争下に生きる庶民へのエールも込められているのでしょう。文化とは一部の専門家や権力者だけのものではなく、人々の日常から生まれるものだと考えさせる映画です。
9月8日


私のすすめる一冊『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』
AIが人間の仕事を奪い、2030年には「雇用大崩壊」が起こる――。『人工知能と経済の未来』は、人工知能の発展が社会や経済、そして人間の働き方をどう変えていくのかを論じた一冊です。機械学習やディープラーニング、「全脳アーキテクチャ」などの技術を紹介しながら、2030年までを「特化型AIの時代」、それ以降を「汎用AIの時代」と位置づけます。著者は、将来的には創造的仕事、管理的業務、歓待業務以外の人間労働が不要になる可能性を示します。一方で、AIには合意形成に役立つ一面があっても、人間のような創造性はないという見方もあります。AIによって仕事がなくなることは、人間の価値が失われることなのか。技術革新を単純に歓迎するのではなく、「人間はAIとともに、どのような社会をつくるのか」という問いを突きつける評論です。
9月6日


私のすすめる一冊『ロシア革命 破局の8か月』
国家は革命する権利を奪えるのか――。2017年、ロシア革命から100年の節目に刊行された池田嘉郎『ロシア革命 破局の8か月』を取り上げ、1917年2月革命から10月革命までの激動の8か月を振り返ります。著者は、ケレンスキーやジノヴィエフらの人物像を交えながら、革命がどのように進展し、社会を大きく変えていったのかを活劇のように描きます。筆者自身も、少年時代にソビエト科学やパブロフに親しみ、学生時代にはメンシェヴィキとボルシェヴィキ、スターリニズムとトロツキズムという対立を知りました。しかし、ベルリンの壁崩壊と東欧社会主義諸国の崩壊を経て、かつて身近だったソ連社会への関心も遠いものとなっていきます。革命から100年を経た今、著者が最後に示す「異なる利害を調整できる制度を粘り強く作る」という言葉は、現代社会にも重く響きます。
8月29日


私のすすめる一冊『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』
人類はなぜ、地球上の生物の頂点に立つことができたのでしょうか。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』は、人類二百万年の歴史をたどりながら、言語、神話、宗教、国家、資本主義、科学技術などを壮大な視野で論じた一冊です。著者は、貨幣や国家、法律、企業など、人類の社会を支える仕組みの多くが「共同幻想」に基づいていると指摘します。狩猟採集から農耕へ移行した「農業革命」は、人類を豊かにした一方で、より忙しい生活をもたらしたという逆説も興味深いところです。そして遺伝子工学などの科学技術によって、人類は自らの身体や種そのものを変える力を手にしようとしています。人類の繁栄とは何だったのか。そして、私たちは本当に幸福になったのか。壮大な人類史から、現代を生きる意味を考えさせられる一冊です。
8月22日


第六十一回 オッペンハイマー(2023年 米国)
2023年公開の映画「オッペンハイマー」は、第二次世界大戦中のマンハッタン計画を率い、「原爆の父」と呼ばれた物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの栄光と苦悩を描いた作品です。原爆開発に成功した科学者は、その圧倒的な破壊力と広島・長崎の惨状に衝撃を受け、戦後には水爆開発に反対。やがて政治的な追及を受け、公職から追放されます。本作が問いかけるのは、科学技術の進歩そのものだけではありません。人類を破壊するほどの力を手にしたとき、科学者はその成果にどこまで責任を負うのか。イソップ寓話のプロメテウスにも触れながら、科学と倫理、核兵器、そして人類の未来について考えます。
8月20日


第五十九回 全地球史アトラス フルストーリー(2021年 You Tube)
『全地球史アトラス フルストーリー』(2021年公開・YouTube)は、地球誕生から生命進化、人類文明、そして地球の未来までを最新の地球科学と進化生物学の知見をもとに描いた壮大な科学映像である。太陽系の形成、プレートテクトニクス、生命の誕生と大量絶滅、カンブリア紀の生命大進化、恐竜の絶滅、人類の出現、農業革命から情報革命まで、約46億年に及ぶ歴史を一つの物語として理解できる構成になっている。
イソップ寓話「造船所のイソップ」を導入に据え、人類の文明や技術も地球という巨大な自然の営みの中に位置付けられることを示唆する。SDGsや環境問題が問われる現代において、人類の未来を長大な時間軸から見つめ直す契機となる、知的好奇心を刺激する優れた科学コンテンツである。
8月6日
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