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院長コラム
—掲載媒体から探す—
院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


神と精神世界、そして世俗考
効率や成果が重視される現代社会において、人は常に競争や評価の中に置かれています。その一方で、精神の平穏や意味を求め、世俗から距離を取ろうとする動きも存在します。
本稿では、精神医療の現場での印象的なエピソードと映画作品を手がかりに、神や信仰といった精神世界と、現実社会の価値観との間にある緊張関係を見つめます。人が本当に求めている「安らぎ」とは何かを考えます。
2025年1月16日


第四十三回 きっとうまくいく (2009年 印度)
イソップ寓話には、自分より秀でた者を侮ると、知らぬ間に更なる困難を招くという教訓が語られています。人の欲望や競争心は、ときに予期せぬ結果を生むものです。
インドの名門工科大学を舞台にした映画『きっとうまくいく』(2009年)は、三人の若者の友情と挑戦を通じて、自由な学びと人生の選択を描いた物語です。トップを目指すランチョーと、劣等感に悩むファルハーンとラージュー。夢や信念に従いながら成長する彼らの姿は、笑いと感動を交えて人生の知恵を浮かび上がらせます。
寓話の教えを手がかりに、この躍動感あふれる映画を振り返ります。
2025年1月9日


第三十六回 イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年 米国)
第二次世界大戦下、英国はドイツ軍の暗号「エニグマ」の解読という極秘任務に挑んでいた。
映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』は、その中心人物であるアラン・チューリングの実像に迫る作品である。彼は類まれな才能を持ちながらも、協調性に乏しく孤立しがちだった。しかし仲間との関係を築く中で、機械による暗号解読という革新的発想を実現し、戦局を左右する成果を上げる。だがその功績は国家機密として隠され、戦後も正当に評価されることはなかった。さらに彼は同性愛という当時の社会規範により迫害を受ける。天才であるがゆえの孤独、国家と個人の関係、そして科学技術の光と影。本作は、戦争が生み出す矛盾と、人間の尊厳について深く問いかける。
2024年5月15日


第十一回 チャイナ・シンドローム(1979年)
巨大災害は自然の猛威として語られることが多い。しかし、その背後には人間の判断や制度の不備が重なっている場合も少なくない。映画 チャイナ・シンドローム は、原子力発電所の事故をめぐる報道と隠蔽の構造を描き、技術と社会の危うい関係を浮き彫りにした作品である。
公開直後に実際の原発事故が起きたことで現実味を帯びたこの物語は、安全神話のもろさと、組織が不都合な真実を隠そうとする心理を鋭く突いている。自然災害と技術災害が複合的に重なった東日本大震災と原発事故は、その問題を現実のものとして突きつけた。
イソップ寓話が示すように、災厄の原因を表層だけで語ることはできない。自然の力だけでなく、それを取り巻く人間の選択と責任を見つめ直すことが、これからの社会に求められている。
2022年7月4日


第九回 34丁目の奇跡(1994年 米国)
「サンタクロースは本当にいるのか」。子どもの頃に誰もが一度は抱くこの問いは、大人になるにつれて現実の中で忘れ去られていく。
しかし、映画『34丁目の奇跡』は、その「信じる心」の意味を改めて問い直す。自らをサンタクロースと名乗る老人クリスの存在は、周囲の人々に戸惑いと混乱をもたらしながらも、やがて心の奥にある純粋な願いや希望を呼び覚ましていく。合理性や証拠が重視される現代社会において、「信じる」という行為は時に非合理と見なされるが、人の心を支える重要な力でもある。
本作は、疑うことに慣れてしまった大人たちに対し、信頼や想像力の価値を訴えかける。夢や希望を持つことが、人間らしさを保つ上でいかに大切かを教えてくれる作品である。
2022年6月6日


第四回 ジャイアンツ
映画『ジャイアンツ』は、テキサスの広大な牧場を舞台に、富と権力、そして家族の変遷を描いた壮大な人間ドラマである。エリザベス・テイラー演じるレスリイは東部から嫁ぎ、価値観の違いに戸惑いながらも新たな家庭を築いていく。一方、貧しい青年ジェットは石油の発見によって一躍成功者となり、ジェームズ・ディーンが演じるその姿は、野心と孤独を象徴している。時代の進展とともに、牧場主としての誇りに生きるビックと、変化を受け入れる次世代との間には溝が生まれる。富や成功に支えられた栄華は決して永続せず、人種問題や価値観の対立が人間関係を揺さぶる。
本作は、誇りと傲慢、そして時代の流れに翻弄される人間の姿を重厚に描き出している。
2022年4月25日


ロイヤルアフェア 愛と欲望の王宮(丁抹 2012年)
映画 ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮 は、18世紀後半のデンマーク王室を舞台に、歴史上の実話をもとにした壮大な宮廷劇である。精神を病んだ国王クリスチャン7世、その侍医として登場する野心家ストルーエンセ、そして王妃カロリーネとの禁断の関係が、政治改革と個人の欲望の交錯の中で描かれていく。啓蒙思想に影響を受けたストルーエンセは、国の近代化を進めようとするが、権力構造の壁と宮廷内の対立により、その理想は次第に追い詰められていく。
本作は単なる歴史ロマンスではなく、「改革」と「反動」、「理想」と「現実」が常に衝突する政治の本質を映し出す。また同時に、権力の中枢においても人間の感情や欲望が決定的な力を持つことを示している。国家や制度が変わっても、人間の構造そのものは容易には変わらないという冷徹な視点が貫かれている。
2012年4月27日
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