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院長コラム
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院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


ストレス障害◆戦争の悪夢に縛られる
映画『ディア・ハンター』は、ベトナム戦争によって人生を大きく変えられた青年たちの姿を描いた作品です。戦場で極限の恐怖を経験したニックは、帰国後もその記憶から逃れられず、危険な行為を繰り返します。戦争は、命を奪うだけでなく、生き残った人の心にも深い傷を残します。本作を通して、PTSD(心的外傷後ストレス障害)における再体験という症状や、戦争体験がその後の人生に及ぼす影響について考えます。戦争の悲劇を戦場だけの出来事として終わらせず、帰還後も苦しみ続ける人々の存在に目を向ける映画評論です。
10月27日


ビューティフル・マインド(2001年 米国)
映画『ビューティフル・マインド』は、ノーベル経済学賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュの人生を描いた作品です。優れた才能を持ちながら、統合失調症によって研究や日常生活に困難を抱えたナッシュ。妻の支えや大学での居場所を得ながら歩んだ人生は、精神疾患を抱える人の可能性と、本人を支える家族や社会の役割について考えさせます。人の価値は、病気の有無や社会的な成功だけで決まるものではありません。本作を通して、精神疾患とともに生きること、そして一人ひとりの人生を支える環境の大切さを考えます。
10月22日


私のすすめる一冊『子育てで一番大切なこと 愛着形成と発達障害』
発達障害への関心が高まる一方で、子どもの発達を考えるときには、生まれ持った特性だけでなく、親子関係や愛着形成、子どもを取り巻く社会環境にも目を向ける必要があります。杉山登志郎著『子育てで一番大切なこと――愛着形成と発達障害』は、現代の子育てを児童精神医学の視点から考え、発達障害と愛着障害の関係、乳幼児期から学童期までの子育て、子どもの貧困、社会全体で子どもを育てることなどを論じた一冊です。本書の「愛着障害を第四の発達障害と位置づける」という考え方については議論の余地があるとしながらも、発達障害を理解するうえで、子どもの環境や人との関係を考える重要性を示しています。
9月26日


障害の理解◆認知を広めた名演技
映画『レインマン』は、自閉症という障害への理解を広く社会に伝えることに貢献した作品である。中古車ディーラーのチャーリーは、父の死をきっかけに、自分には存在すら知らされていなかった兄レイモンドと出会う。自閉症のため施設で暮らす兄を、当初は遺産目当てで連れ出したチャーリーだったが、長い旅を共にする中で、兄の独特な行動や高い記憶力、その背景にある人間性を少しずつ理解していく。やがて幼い頃に自分を守ってくれた「レインマン」の正体が兄だったことを知り、チャーリーの兄に対する見方も変化していく。ダスティン・ホフマンの名演技は、自閉症の人の姿を社会に印象づける大きな役割を果たした。障害を「異質な存在」として見るのではなく、一人の人間として理解し、ともに生きるとはどういうことなのかを考えさせる作品である。
9月15日


平行と垂直(2026年 日本)
自閉スペクトラム症(ASD)の兄と妹、そして二人を取り巻く人々の日常を描いた映画「平行と垂直」。母を早くに亡くし、母方の祖母に引き取られた兄妹は、それぞれ異なる形で人生を歩み始めます。物を平行や垂直に並べる兄は、清掃の仕事に就き、反復練習によって弁当作りも身につけています。仕事の丁寧さが評価される一方、時間がかかることを年配の同僚から指摘されるなど、社会の中で生きる難しさも描かれます。共同生活の支援者が必要なときに駆けつけ、幼い頃から兄を支えてきた妹にも結婚という人生の転機が訪れます。本作が問いかけるのは、障害の有無だけではありません。人はいつまで地域で暮らし続けられるのか、家族だけでなく周囲の人々がどう支え合うのか。「平均的人間」という概念そのものを問い直しながら、発達障害と共生社会について考えさせる作品です。
8月31日


私のすすめる一冊『スリープ・レボリューション 最高の結果を残すための 「睡眠革命」』
『スリープ・レボリューション 最高の結果を残すための「睡眠革命」』は、米国のジャーナリスト、アリアナ・ハフィントンが、現代社会における睡眠不足の危機と、睡眠の重要性を説いた一冊です。日本人の睡眠時間が半世紀の間に大きく減少する一方、スマートフォンやインターネットへの依存、長時間労働による過労死・過労自殺など、睡眠不足は個人の健康だけでなく社会全体の問題となっています。本書では、産業革命以降、効率や生産性を重視する社会の中で睡眠が軽視されてきた歴史を振り返り、睡眠科学の知見から、眠っている間にも脳や身体が活発に働いていることを紹介します。さらに、睡眠不足と糖尿病、心血管疾患、肥満、認知症などとの関連にも触れ、よりよい睡眠を実現するための方法や新しい技術を紹介しています。「眠らずに頑張る」ことが美徳とされがちな現代社会に対し、睡眠こそ健康と生存の基盤であると問い直す、現代人必読の一冊です。
8月15日


私のすすめる一冊『一流の狂気 : 心の病がリーダーを強くする』
『一流の狂気―心の病がリーダーを強くする』は、イラン出身の精神科医ナシア・ガミーが、精神医学と歴史を融合させながら「危機の時代には、精神疾患を経験したリーダーの方が優れた判断を下すことがある」という大胆な仮説を展開した一冊である。政治・軍事・経済の歴史を彩った指導者たちを病跡学の視点から分析し、チャーチル、シャーマン将軍、テッド・ターナーらの事例を通して、うつ病や双極性障害、統合失調症と創造性・共感力・危機対応能力との関係を考察する。一方で、平時には安定した性格が長所となる「普通のリーダー」の限界にも目を向ける。精神疾患を美化するのではなく、人間の多様性とリーダーシップの本質を問い直す刺激的な一冊であり、精神医学だけでなく歴史や経営学に関心を持つ読者にも多くの示唆を与えてくれる。
8月8日


統合失調症◆家族は見守る姿勢持って
『こわれゆく女』(1974年、アメリカ)は、ジョン・カサベテス監督による名作で、統合失調症を抱える一人の主婦と、その家族が直面する苦悩をリアルに描いたヒューマンドラマです。夫や子どもを深く愛しながらも、自らの感情や行動を制御できず苦しむメイベルと、彼女を支えようとしながら戸惑い、疲弊していく夫ニックの姿は、精神疾患が本人だけでなく家族全体に大きな影響を及ぼすことを教えてくれます。主演のジーナ・ローランズとピーター・フォークの迫真の演技も高く評価され、精神疾患への理解を深める作品として現在も語り継がれています。本作は、治療だけでなく、家族が本人の苦しさを受け止め、焦らず見守ることの大切さを問いかける映画です。
8月4日
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