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ストレス障害◆戦争の悪夢に縛られる

執筆者の写真: かゆかわクリニック院長 粥川裕平
かゆかわクリニック院長 粥川裕平
8 時間前
読了時間: 2分

中日新聞朝刊 2007.1.26



ディア・ハンター (1978年、アメリカ)



戦争、テロ、災害などで生死にかかわる体験をした人に現れやすい「PTSD」(心的外傷後ストレス障害)をご存じでしょうか。アメリカではベトナム戦争の帰還兵の精神的な後遺症が大きな社会問題になって、この病名が生まれました。


「ディア・ハンター」は、田舎町でシカ狩りを楽しみ平和に暮らしてきた青年たちが、ベトナム戦争によって人生を破壊される姿を描いた作品です。


この中で、地獄の象徴として描かれるのが、「ロシアンルーレット」です。マイケル、スティーブン、ニックの三人が北ベトナム軍の捕虜になり、川沿いの収容所に閉じこめられます。そこでは敵軍兵士たちが、捕虜二人を向かい合わせ、自分のこめかみに当てたリボルバーの引き金を交互に引かせていました。どちらが命を落とすかを賭けていたのです。ロバート・デ・ニーロが演じるマイケルは、発狂寸前のニックとスティーブンを励まし、持ち前の勇気と機転で、この窮地を脱します。


故郷に戻ったマイケルは熱い歓迎を受けますが、心は晴れません。やがて、スティーブンが片脚を失って陸軍病院に入院していることを知ります。会いに行くと、意外な大金を持っていました。サイゴン(現在のホーチミン市)で消息を絶ったニックからの送金でした。


彼を故郷に連れ戻すためにサイゴンに向かったマイケルは、ショックを受けます。うつろな目をしたニックが、ロシアンルーレットの賭場で、命がけのゲームをして大金を稼いでいたのです。


さて、恐怖の記憶に苦しめられるニックが、自ら同じ体験を繰り返したのはなぜでしょうか。PTSDで恐怖の記憶が生々しく再現されることを「再体験」と呼びます。この再体験を繰り返すうちに、ニックは現実と悪夢の区別がつかなくなったようです。


この作品がきっかけで、ベトナム戦没者の碑が建てられました。

戦争は、生き残った人にもさまざまな悲劇をもたらします。








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