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院長コラム
—掲載媒体から探す—
院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


第六十七回 麦秋(むぎのあき)(1934年 米国)
世界大恐慌のさなか、失業し生活の先行きも見えないシムズ夫妻。抵当に入った農場を与えられた夫は、何をすればよいか分からないところから出発する。しかし、偶然出会った失業者を仲間に迎えたことをきっかけに、「仕事はないが、働く意欲と能力を持つ人は他にもいる」と考え、農民、大工、床屋、葬儀屋など、さまざまな職業を持つ人々を農場へ招き入れる。人々は力を合わせて畑を耕し、家を建て、一つの共同体を築いていく。やがて干魃に見舞われるが、夫の発見をもとに仲間たちは水路建設に取り組み、農場を救う。映画が描くのは、一粒の麦を育てることさえ容易ではないという農業の厳しさと、困難な時代を人々が力を合わせて乗り越える姿である。食料と農業をめぐる現代日本の問題にも目を向けながら、人は一人では生きられないこと、そして働くことや共同体の意味を考えさせる作品である。
23 時間前


第六十六回 釣りバカ日誌 (1988年~2009年 日本)
『釣りバカ日誌』は、建設会社に勤める万年平社員の浜崎伝助、通称「ハマちゃん」と、会社の鬼社長・鈴木一之助、通称「スーさん」の友情を描いた人気シリーズである。仕事では出世とは無縁のハマちゃんだが、釣りという趣味を得たことで人生は一変する。やがて社長と平社員という立場を超え、「スーさん」「ハマちゃん」として釣りを楽しむ二人。そこには、会社での地位や名誉とは別のところにある幸福の姿が描かれている。イソップ寓話「笛を吹く漁師」や「一生幸福でいたかったら釣りを覚えなさい」という中国の諺にも触れながら、仕事一辺倒ではない人生の楽しみ、出世と幸福の関係について考える。経済の失速とともに「五時から男」のような生き方が職場から消えつつある現代だからこそ、ハマちゃんの生き方が問いかけるものは大きい。
9月17日


第六十五回 生きる(日本 1952年、UK 2023年)
「人間は何のために生きるのか」――。黒澤明監督、志村喬主演の「生きる」は、死を目前にした一人の公務員が、自らの人生を問い直し、最後に市民のための仕事を成し遂げようとする姿を描いた名作です。30年間無欠勤の市民課長・渡辺勘治は、胃癌を告知され、息子からも冷たくされることで、これまでの人生が無為だったことに気づきます。しかし、若い女性との出会いをきっかけに「生きる」ことの意味を考え始め、下水溜まりを公園に変える仕事に情熱を注ぎます。イソップ寓話「旅人とプラタナス」では、旅人から役立たずと蔑まれた木が、実は人々に大きな恩恵を与えていました。人間もまた、目立たなくても社会を支える仕事をしています。本作は官僚主義を批判すると同時に、働くことの意味、社会に貢献することの尊さ、人生の最後に何を残すのかという普遍的な問いを投げかけます。
9月10日


第六十四回 男はつらいよ お帰り寅さん(2019年 日本)
「困ったことがあったら風に向かって俺の名前を呼べ。どこからでも飛んで来るから」――。寅さんの言葉は、姿が見えなくなった後も人の心を支える「心の拠り所」の存在を象徴しています。映画「男はつらいよ お帰り寅さん」は、シリーズ50作目として、寅さんの甥・満男を主人公に、人生の節目を迎えた人々の再会と心のつながりを描いた作品です。満男は50歳になり、かつての初恋の人・泉と再会します。娘から「この三日間パパは遠い所に行ってしまったようだった」と言われたことで、自分が過去の思い出に心を奪われていたことに気づきます。イソップ寓話「野生の驢馬と家の驢馬」は、独りで生きることの危うさを描きます。自由に生きる野生の驢馬は、家畜の驢馬を蔑みますが、危機に遭うと誰の助けも得られません。人は完全に独立して生きるのではなく、家族や友人、思い出など、いざというときに心を支えてくれる「帰る場所」を持つことが大切なのかもしれません。
9月4日


第六十二回 明日に向かって笑え(2019年 亜爾然丁)
金融危機によって財産を奪われ、最愛の妻まで失った主人公が、仲間たちとともに失った夢を取り戻そうと立ち上がる――。アルゼンチン映画「明日に向かって笑え」は、2001年の金融危機を背景に、詐欺に遭った人々の再起を描いた作品です。銀行支店長や弁護士に巧妙にだまされ、全財産を失った主人公。しかし、絶望の中でも仲間たちは農業施設の再建という夢を諦めません。イソップ寓話「ホルコス」では、不正を働いた者には、いつ現れるか分からない正義の神の罰が下されます。本作もまた、奪われたものを取り返すために人々が知恵を出し合い、連帯する姿を描きます。富・愛・名誉を幸福の条件としたアリストテレスにも触れながら、幸福とは何か、困難なときに人を支えるものは何かを考えさせる映画です。
8月27日


第六十一回 オッペンハイマー(2023年 米国)
2023年公開の映画「オッペンハイマー」は、第二次世界大戦中のマンハッタン計画を率い、「原爆の父」と呼ばれた物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの栄光と苦悩を描いた作品です。原爆開発に成功した科学者は、その圧倒的な破壊力と広島・長崎の惨状に衝撃を受け、戦後には水爆開発に反対。やがて政治的な追及を受け、公職から追放されます。本作が問いかけるのは、科学技術の進歩そのものだけではありません。人類を破壊するほどの力を手にしたとき、科学者はその成果にどこまで責任を負うのか。イソップ寓話のプロメテウスにも触れながら、科学と倫理、核兵器、そして人類の未来について考えます。
8月20日


第六十回 裏窓(1954年 米国)
アルフレッド・ヒチコック監督の『裏窓』(1954年・アメリカ)は、事故で車椅子生活となった主人公が、退屈しのぎに向かいの集合住宅を覗くうち、殺人事件の疑惑に巻き込まれていくサスペンス映画です。深夜に大きな鞄を持って外出する男、花壇を気にする姿、肉切り包丁や小型のこぎりなど、主人公が目撃した断片的な情報は、次第に恐ろしい疑惑へと結びついていきます。しかし、友人の刑事はそれを妄想として退け、主人公の推理が正しいのか、それとも単なる思い込みなのか、観客も揺さぶられます。作品には、イソップ寓話「羊飼いの悪戯」、いわゆる「狼少年」の話が重ねられています。一度「嘘つき」と思われた人の言葉は、本当の危機に直面しても信じてもらえません。現代社会でも、誤情報や過剰な警告、冤罪など、真偽を見極める難しさは変わりません。「覗き」という行為の危うさも含め、他人の言葉や目撃情報をどう判断するのかを考えさせる一作です。
8月13日


第五十九回 全地球史アトラス フルストーリー(2021年 You Tube)
『全地球史アトラス フルストーリー』(2021年公開・YouTube)は、地球誕生から生命進化、人類文明、そして地球の未来までを最新の地球科学と進化生物学の知見をもとに描いた壮大な科学映像である。太陽系の形成、プレートテクトニクス、生命の誕生と大量絶滅、カンブリア紀の生命大進化、恐竜の絶滅、人類の出現、農業革命から情報革命まで、約46億年に及ぶ歴史を一つの物語として理解できる構成になっている。
イソップ寓話「造船所のイソップ」を導入に据え、人類の文明や技術も地球という巨大な自然の営みの中に位置付けられることを示唆する。SDGsや環境問題が問われる現代において、人類の未来を長大な時間軸から見つめ直す契機となる、知的好奇心を刺激する優れた科学コンテンツである。
8月6日
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