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院長コラム
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院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


第十一回 チャイナ・シンドローム(1979年)
巨大災害は自然の猛威として語られることが多い。しかし、その背後には人間の判断や制度の不備が重なっている場合も少なくない。映画 チャイナ・シンドローム は、原子力発電所の事故をめぐる報道と隠蔽の構造を描き、技術と社会の危うい関係を浮き彫りにした作品である。
公開直後に実際の原発事故が起きたことで現実味を帯びたこの物語は、安全神話のもろさと、組織が不都合な真実を隠そうとする心理を鋭く突いている。自然災害と技術災害が複合的に重なった東日本大震災と原発事故は、その問題を現実のものとして突きつけた。
イソップ寓話が示すように、災厄の原因を表層だけで語ることはできない。自然の力だけでなく、それを取り巻く人間の選択と責任を見つめ直すことが、これからの社会に求められている。
2022年7月4日


第十回 風と共に去りぬ(1939年)
人は他人の欠点には敏感でありながら、自分の弱さや過ちにはなかなか気づけない。この普遍的な人間の性質は、イソップ寓話「振分け袋」にも描かれている。
映画 風と共に去りぬ は、激動の南北戦争時代を背景に、強烈な個性を持つ女性スカーレットの生き方を通じて、その心理を鮮やかに映し出す。彼女は自らの魅力と欲望に従い、周囲の人々を巻き込みながら突き進むが、真に大切なものには最後まで気づけない。その姿には、自己愛性パーソナリティ障害 にも通じる自己中心的な傾向が見て取れる。
過剰な自己愛は、人間関係の歪みや孤立を招きかねない。一方で、適度な自己愛と他者への配慮のバランスこそが、成熟した人間関係の基盤となる。本作は、華やかな物語の裏で、人が自分自身を見つめ直すことの難しさと重要性を静かに問いかけている。
2022年6月13日


第九回 34丁目の奇跡(1994年 米国)
「サンタクロースは本当にいるのか」。子どもの頃に誰もが一度は抱くこの問いは、大人になるにつれて現実の中で忘れ去られていく。
しかし、映画『34丁目の奇跡』は、その「信じる心」の意味を改めて問い直す。自らをサンタクロースと名乗る老人クリスの存在は、周囲の人々に戸惑いと混乱をもたらしながらも、やがて心の奥にある純粋な願いや希望を呼び覚ましていく。合理性や証拠が重視される現代社会において、「信じる」という行為は時に非合理と見なされるが、人の心を支える重要な力でもある。
本作は、疑うことに慣れてしまった大人たちに対し、信頼や想像力の価値を訴えかける。夢や希望を持つことが、人間らしさを保つ上でいかに大切かを教えてくれる作品である。
2022年6月6日


第八回 塩を運ぶ驢馬
人は誰しも弱点や苦手を抱えているが、それにどう向き合うかで人生は大きく変わる。
イソップ寓話「塩を運ぶ驢馬」は、安易な成功体験に頼った結果、思わぬ破滅を招く愚かさを描く。
一方、映画『アイリスへの手紙』は、読み書きができないという致命的な弱点を抱えた男スタンリーが、他者の支えと自己努力によってそれを克服していく姿を丁寧に描く。貧困や喪失といった厳しい現実の中でも、誠実に生きようとする人間の強さが静かに浮かび上がる。楽をして困難を回避しようとするか、それとも困難に向き合い乗り越えるか――本作はその選択の重みを問いかける。
2022年5月30日


第七回 守銭奴
映画『マルサの女』は、脱税を暴く国税査察官の活躍を通して、人間の金銭欲と執着を鋭く描いた作品である。やり手の査察官・亮子は、ラブホテル経営者・権藤の不正を疑い、徹底的な調査に乗り出す。巧妙に隠された資産、偽装された証拠、そして人間の欲望が絡み合う中で、真実が徐々に浮かび上がっていく。
一方、イソップ寓話「守銭奴」が示すように、使われることのない金はただの石と変わらない。本作は、金を蓄えること自体が目的化したとき、人は何を失うのかを問いかける。尽きることのない欲望と、それに翻弄される人間の姿を通して、金と生き方の関係を深く考えさせる作品である。
2022年5月19日


第六回 プロヴァンスの贈りもの
映画『プロヴァンスの贈りもの』(原題:A Good Year)は、成功を追い求める都会人が、南仏の穏やかな暮らしの中で本当の豊かさに気づいていく物語である。
ロンドンで成功を収めたマネートレーダーのマックスは、叔父の遺産相続をきっかけにプロヴァンスを訪れる。当初は資産価値しか見ていなかった彼だが、土地や人々との関わりの中で、金銭では測れない価値に触れていく。拝金主義に染まっていた心が、自然や人との絆によって少しずつ解きほぐされていく過程は、現代社会への問いかけでもある。
本作は、欲望を追い続ける生き方と、心の充足を大切にする生き方の対比を通じて、人生における本当の幸福とは何かを描き出している。
2022年5月18日


第五回 農夫と息子たち
映画『遥かなる大地へ』は、新天地アメリカを目指した若者たちの夢と挫折、そして再起を描いた壮大な人間ドラマである。十九世紀末のアイルランドで貧しい小作農として生きていた主人公ジョセフは、父の死と家の焼失をきっかけに運命を変えるため新大陸へと渡る。道中で出会ったシャノンとともに数々の困難に直面しながらも、彼らは決して希望を失わない。
すべてを失い、どん底を味わいながらも、自らの力で道を切り拓こうとする姿は、イソップ寓話「農夫と息子たち」が示す“努力こそ宝”という教訓と重なる。
本作は、苦労の積み重ねがやがて実を結ぶこと、そして夢を追い続ける意志の尊さを力強く描いている。
2022年5月9日


第四回 ジャイアンツ
映画『ジャイアンツ』は、テキサスの広大な牧場を舞台に、富と権力、そして家族の変遷を描いた壮大な人間ドラマである。エリザベス・テイラー演じるレスリイは東部から嫁ぎ、価値観の違いに戸惑いながらも新たな家庭を築いていく。一方、貧しい青年ジェットは石油の発見によって一躍成功者となり、ジェームズ・ディーンが演じるその姿は、野心と孤独を象徴している。時代の進展とともに、牧場主としての誇りに生きるビックと、変化を受け入れる次世代との間には溝が生まれる。富や成功に支えられた栄華は決して永続せず、人種問題や価値観の対立が人間関係を揺さぶる。
本作は、誇りと傲慢、そして時代の流れに翻弄される人間の姿を重厚に描き出している。
2022年4月25日
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