障害の理解◆認知を広めた名演技


中日新聞朝刊 2006.12.08
「レインマン」(1988年、アメリカ)
発達障害の代表格・自閉症は、とても誤解されやすい障害です。その正しい理解に貢献したのが「レインマン」です。
商売の資金繰りに苦労していた中古車ディーラーのチャーリー(トム・クルーズ)に、父の訃(ふ)報が届きます。少年時代に家を飛び出したまま、関係を絶っていた父でした。チャーリーは遺産目当てにいそいそと故郷オハイオに戻ります。 ところが高額の遺産の相続人が、見知らぬ兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)だと知り、愕然(がくぜん)とします。レイモンドは自閉症のために療育施設に入所しており、チャーリーにはその存在すら教えられていなかったのです。
やけっぱちになったチャーリーは、兄を施設から連れ出し、自ら後見人になって財産を奪おうと企て、自分の住むロサンゼルスに連れていこうとします。ところが空港に行くと、レイモンドは頑として飛行機に乗ろうとはしません。 やむなく、父の遺(のこ)した車での長旅となります。その道中も、チャーリーは兄の独特なこだわりや一風変わった意思表示の仕方に振り回されてばかり。かと思うと、ラスベガスで、レイモンドの驚異的な記憶力のおかげでカードゲームに大勝ちする場面も。自閉症の人によく見られる「見たことを記憶する能力の高さ」のなせる業でした。
共に旅するうちに、チャーリーは、幼い日のかすかな記憶に残る”守り神レインマン”が実はレイモンドだったと気づき、兄のためにまともな後見人になろうと決意します。異性やお金に執着する弟と世俗を超越した兄。笑いとペーソスを織り交ぜた珍道中を通じて、「共生」のテーマが観客の心にしみ込んでいきました。
自閉症は、脳の機能障害により、特殊な認知、知覚、言語の障害のために人との接触において独特の行動様式を示す障害です。一般の人々に自閉症の人の姿を伝えたダスティン・ホフマンの名演技は、今も関係者の間で語り継がれています。




