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院長コラム
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院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


中高年の女性に多い不眠症
「眠れない」という悩みは、現代社会において決して珍しいものではない。日本人の約4人に1人が不眠を経験しているとされ、とりわけ中高年の女性に多いことが知られている。不眠は単なる体質の問題と思われがちだが、その背景には日常生活の不満やストレス、対人関係の悩みなど、心理的要因が深く関わっている場合が多い。
現代は本来の生活リズムを崩しやすく、仕事や娯楽によって睡眠時間が軽視されがちである。その結果、ストレスと不眠が相互に影響し合い、「眠れないこと自体が新たな不安を生む」という悪循環に陥るケースも少なくない。
不眠の原因は身体疾患から精神疾患まで多岐にわたり、放置すれば生活の質の低下だけでなく、深刻な心の問題につながる可能性もある。適切な生活習慣の見直しとともに、早めの対処が重要とされている。
2024年9月11日


眠り病◆難病なのに理解されず
突然、場所や状況を問わず眠りに落ちてしまう――そんな症状を持つナルコレプシーは、日常生活に大きな支障をきたす難病であるにもかかわらず、「怠けている」といった誤解を受けやすい病気である。日本では比較的発症率が高いとされながら、社会的認知は十分とは言えない。
映画マイ・プライベート・アイダホでは、この病を抱える若者の孤独や葛藤が繊細に描かれている。症状だけでなく、生い立ちや人間関係の苦しみも重なり、彼の生きづらさはより深く浮き彫りになる。
近年、脳内物質オレキシンの減少が原因の一つとして明らかになり、医学的理解は進みつつある。しかし治療は依然として対症療法が中心であり、制度的支援も十分ではない。ナルコレプシーは、医学だけでなく社会全体の理解と支援が求められる疾患である。
2024年8月28日


統合失調症、社会復帰に援助を
統合失調症は長期的な治療と支援を必要とする精神疾患であり、症状の安定後も社会復帰には多くの困難が伴う。かつては長期入院が主流だったが、「地域で生きる」という理念のもと、脱施設化が進められてきた。しかし、その理想と現実の間には大きな隔たりがある。
映画聖者の眠る街は、退院後に社会の中で生きる統合失調症の当事者の姿を描き、その孤独や葛藤を浮き彫りにしている。医療から離れた後、生活のすべてを自分で担うことになる現実は厳しく、支援が不十分であれば再び孤立に陥る危険もある。
真の社会復帰とは、単に病院を出ることではなく、安心して暮らせる居場所と周囲の理解を得ることにある。医療・福祉・地域社会が連携し、一人ひとりに応じた継続的な支援を行う体制づくりが求められている。
2024年8月21日


歩行中にも発作的に居眠り
日常生活の中で誰もが経験する眠気は、通常は一時的な疲労反応にすぎない。しかし、意志とは無関係に突然眠り込んでしまう場合、その背後には病的な要因が潜んでいることがある。ナルコレプシーは代表的な過眠症の一つであり、日中の強い眠気や突然の睡眠発作を特徴とする神経疾患である。
精神科医・粥川裕平氏は、歩行中や会話中にも発作的に眠ってしまう患者の事例を紹介しながら、この疾患が単なる「怠け」や「性格の問題」と誤解されやすい現実を指摘する。映画マイ・プライベート・アイダホでも描かれたように、当事者は社会的偏見や孤立に直面しやすい。
一方で、適切な診断と薬物治療により症状が改善する例もあり、早期の医療的介入が重要となる。病気への理解と社会的支援の不足は、患者の生活や就労に大きな影響を与えるため、医療と社会の両面からの支援体制が求められている。
2024年7月31日


共同作業の喜び、患者に自信
精神科医療の現場では、治療は薬物療法やカウンセリングだけにとどまらない。患者が社会性や主体性を取り戻すためには、「誰かと共に何かを成し遂げる体験」が重要な意味を持つ。精神病院では年間行事や文化活動、デイケアなどを通じて、患者同士やスタッフとの関わりが日常的に築かれている。
統合失調症をはじめとする精神疾患の患者は、繊細で傷つきやすく、ストレスに対して脆弱であるとされる。そのため孤立しやすく、自信や意欲を失いがちである。しかし、演劇や創作活動などの共同作業に参加することで、自分の役割を実感し、他者からの評価を受ける経験が回復への大きな契機となる。
映画ハーモニーは、精神病院での演劇活動を通じて、混沌とした個性が調和へと変わっていく過程を描き出す。そこには、医療の枠を超えた「人間的回復」の本質が映し出されている。
2024年7月17日


分かっちゃいるけど◆刺激求めギャンブル投入
「一攫千金」という甘い夢は、多くの人を惹きつける。しかし、その裏側には人間の脳の仕組みに根ざした強い依存性が潜んでいる。のるかそるかは、競馬にのめり込む主人公を通じて、ギャンブルの本質とその危うさを描いた作品だ。
勝つか負けるかという極端な結果と、その過程で生まれる期待や興奮は、脳の快楽中枢や新規探究心を強く刺激する。たとえ偶然の勝利であっても「次も当たるかもしれない」という感覚が繰り返され、やがてやめられなくなる。これは単なる意志の弱さではなく、心理的・生理的なメカニズムに基づく現象である。
「分かっているのにやめられない」という状態は、強迫性障害にも通じる側面を持つ。現代社会において、ギャンブルとの適切な距離感をどう保つかは、個人の問題にとどまらず、重要なメンタルヘルスの課題となっている。
2024年7月10日


酒は百薬の長か◆体むしばまれる依存症
「酒は百薬の長」と言われる一方で、過剰な飲酒は命を脅かす深刻な依存症へとつながる。映画 失われた週末 は、アルコール依存症に陥った主人公の転落を通して、その恐ろしさをリアルに描いた作品だ。飲酒は一時的な快楽やストレス解消をもたらすが、やがて心身の両面で依存を形成し、生活のすべてが酒中心に変わっていく。耐性の形成により飲酒量は増え、仕事や人間関係が崩壊していくのも特徴である。さらに、離脱時には幻覚やせん妄といった重い症状が現れ、命に関わることもある。「やめたいのにやめられない」という状態は、単なる意思の問題ではなく、病としての理解が必要だ。現代では治療法も進歩しているが、依然として多くの人が苦しんでいる。飲酒との向き合い方が問われる時代である。
2024年5月29日


人生を破壊…薬物依存は「病」
「意志が弱いからやめられない」と思われがちな薬物依存だが、その本質は個人の性格ではなく、脳と心理に深く関わる“病”である。映画 バスケットボール・ダイアリーズ は、平凡な高校生が非行から薬物へと転落していく過程を描き、依存の恐ろしさと現実を突きつける。最初は軽い興味や誘いから始まった行動が、やがて習慣化し、強い欲求へと変わっていく。脳の快楽系が刺激されることで、「もう一度」という欲求が繰り返され、理性では止められなくなるのだ。さらに、背景には家庭環境やストレス、孤独といった要因が重なりやすい。依存は単なる逸脱ではなく、適切な支援と治療が必要な状態である。問題を個人の責任に押しつけるのではなく、社会全体で支える視点が求められている。
2024年5月22日
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