私のすすめる一冊『近代日本一五〇年 ―科学技術総力戦体制の破綻』

2 日前
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愛知保険医新聞 2018/04/25
山本義隆 著
出版 岩波新書
2018/01/19
「近代日本一五〇年 ―科学技術総力戦体制の破綻」という表題の本書で、明治維新から今日まで官僚と軍部主導の施策が一貫していると断じ、明治維新を成し遂げた政府が西洋の科学技術の摂取に邁進したのは富国強兵軍事目的だったが、その近代化は西洋の科学技術の導入だけではなく、江戸時代以来の民間職人の技術改良の果たした役割も大きかったと述べる。産業立国が「女工哀史」や足尾銅山鉱毒問題に象徴される国民の命と健康を犠牲にした一面も指摘する。
明治以降、産官学が一体となって科学技術の研究を進めたのは帝国主義的侵略戦争のためで、敗戦後も産 官学の一体構造は継続し、戦前戦中に軍事技術の研究 開発に従事していた技術者がそのまま戦後の政府や大企業で重用され産業振興を担ったのだ。その影で日本各地で公害が起き被害者救済は後回しにされた。広島・長崎の悲劇を受けた原子力を戦後政府が何故、研究・利用を推進したのか、東日本大震災で東電福島第一原発炉心融解により原子力振興政策が破綻した点に言及する。産官学一体となって国力増大、原子力の軍事利用を図っていると批判する。
明治維新以後の科学技術史として面白い読み物だと思う。
「知性の反乱」(前衛社、一九六九年) で東大解体を叫んだ氏は、湯川秀樹に見込まれた程の知的エリートだが、詰まるところ悲観論が根底にあり、読後は虚無感が残るだけだ。
恐らく解体論と悲観主義は表裏一体なのかも知れない。





