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院長コラム
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院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


エイズ◆すべての人が平等
感染症は単なる医学的問題にとどまらず、社会の価値観や偏見を浮き彫りにする。とりわけエイズは、「死の病」として恐れられてきた歴史の中で、差別や誤解と強く結びついてきた。科学的知識が進んだ現在でも、感染者や同性愛者に対する偏見は根強く残り、治療や生活の質に影響を及ぼしている。
映画フィラデルフィアは、不当解雇をめぐる裁判を通して、尊厳と平等の意味を問い直す作品である。主人公は病によって社会から排除されながらも、法のもとでの平等を求めて闘う。その姿は、自由と平等を掲げた理念が、現実にはいかに脆く揺らぐかを示している。
医療の進歩だけでは不十分であり、正しい知識と社会の理解が伴わなければ、真の意味での「平等」は実現しない。すべての人が等しく尊重される社会とは何かが、いま改めて問われている。
2024年12月11日


障害◆周囲の視線に負けない
映画『ギルバート・グレイプ』は、知的障害のある弟とその家族を支える兄の姿を通して、社会の中で生きることの意味を問いかける作品である。小さな町で暮らす一家は、周囲の視線や偏見にさらされながらも、互いを支え合い懸命に日々を生きている。特に印象的なのは、障害のある息子を守る母親の姿だ。世間の冷たい目に臆することなく、堂々と子を迎えに行くその姿には、家族の強さと深い愛情が表れている。本作は、障害を持つ人々の感性の鋭さや人間理解の深さを描くと同時に、支える家族の苦悩と誇りを映し出す。周囲の評価に縛られず生きることの大切さを、力強く伝える作品である。
2024年12月2日


認知症◆それでも愛されるか
映画『きみに読む物語』(原題:The Notebook)は、認知症という過酷な現実の中で、それでもなお消えない愛のかたちを描いた感動作である。
物語は、記憶を失った妻に対して、夫がかつての恋の記憶を語り続ける場面から始まる。若き日の二人は身分違いの恋に引き裂かれながらも、強い思いで結ばれていく。しかし時を経て、妻はアルツハイマー病により記憶を失ってしまう。夫は日々、過去の物語を読み聞かせることで、失われた絆をつなぎ止めようとする。
本作は、記憶という不確かなものに対して、愛という確かなものがどこまで寄り添えるのかを問いかける。老いと病を超えてなお人を支える感情の深さを、力強く描き出している。
2024年11月29日


強迫性障害◆完全主義の怖さを知ろう
人は「きちんとしていたい」「失敗したくない」という思いを持つが、その思いが過剰になると生活に支障をきたすことがある。恋愛小説家は、強いこだわりと不安を抱えた中年作家が、他者との出会いを通じて変化していく姿を描いた作品である。彼は不潔恐怖や確認行為といった症状に苦しみながらも、ウエートレスとの関係をきっかけに少しずつ世界との関わり方を変えていく。
このような状態は強迫性障害の一形態であり、過度な完全主義や不安の高まりによって、日常生活の自由さが制限されることがある。現代では治療法も進歩し、薬物療法と心理的アプローチの組み合わせによって改善が期待できるようになっている。
重要なのは「正しさ」や「完璧さ」にとらわれすぎず、状況に応じて柔軟に対応する力を育てることである。心のバランスを保つことが、よりよく生きるための基盤となる。
2024年11月7日


きずな◆血は水より濃い
人と人との関係が断絶しても、病という出来事が再び関係を結び直す契機になることがある。血液のがんである白血病は、骨髄移植という高度な医療によって治療が試みられる代表的な疾患であり、その過程では家族や他者との「きずな」が大きな意味を持つ。
映画マイ・ルームは、長く断絶していた姉妹関係が、白血病という病をきっかけに再び向き合うようになる姿を描いている。骨髄移植のために再会した家族は、過去のわだかまりや葛藤を抱えながらも、病を前にして少しずつ関係を修復していく。
この物語が示すのは、血縁という物理的なつながりだけでなく、危機の中で再生される心理的・社会的な結びつきの重要性である。「血は水より濃い」という言葉の意味は、単なる家族愛ではなく、極限状況の中で立ち現れる人間関係の本質として再解釈される。
2024年10月25日


がんばらない◆やわらかな時間も必要
現代社会では「努力すること」「成果を上げること」が強く求められる一方で、その圧力が心の不調を引き起こすことも少なくない。とりわけ過剰な緊張状態が続くと、心はバランスを崩し、抑うつや過活動といった極端な状態を行き来することがある。
映画やわらかい生活は、キャリア志向の女性が喪失体験をきっかけに、生活と心のリズムを大きく変えていく姿を描く作品である。主人公は双極性障害と診断され、これまでの「走り続ける生き方」から一転し、治療と休息を通じて新しい生活の形を模索していく。
その過程で出会う人々との関係は必ずしも整ったものではないが、むしろ不完全でゆるやかなつながりの中に、人間らしい回復の可能性が見えてくる。効率や成果では測れない「時間の質」が、心の再生にとって重要な意味を持つことを示唆している。
2024年10月10日


不眠症◆軽視せず早めに相談を
不眠症は、多くの現代人が抱える身近な問題でありながら、つい軽視されがちな症状である。眠れない状態が続くと、日中の集中力低下や判断力の鈍化を招き、仕事や人間関係にも影響を及ぼす。さらに慢性化すれば、うつ病などの精神疾患へと発展するリスクも高まる。
映画眠れぬ夜のためには、不眠に苦しむ平凡な会社員が、思わぬ事件に巻き込まれていくサスペンスである。睡眠不足による心身の不安定さが、日常を非日常へと変えてしまう様子が象徴的に描かれている。
不眠の背景には、家庭や職場でのストレス、生活習慣の乱れなどが複雑に絡んでいることが多い。適切な生活リズムの確立や環境調整に加え、必要に応じて専門家へ相談することが、回復への第一歩となる。
2024年9月18日


眠り病◆難病なのに理解されず
突然、場所や状況を問わず眠りに落ちてしまう――そんな症状を持つナルコレプシーは、日常生活に大きな支障をきたす難病であるにもかかわらず、「怠けている」といった誤解を受けやすい病気である。日本では比較的発症率が高いとされながら、社会的認知は十分とは言えない。
映画マイ・プライベート・アイダホでは、この病を抱える若者の孤独や葛藤が繊細に描かれている。症状だけでなく、生い立ちや人間関係の苦しみも重なり、彼の生きづらさはより深く浮き彫りになる。
近年、脳内物質オレキシンの減少が原因の一つとして明らかになり、医学的理解は進みつつある。しかし治療は依然として対症療法が中心であり、制度的支援も十分ではない。ナルコレプシーは、医学だけでなく社会全体の理解と支援が求められる疾患である。
2024年8月28日
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