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院長コラム
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院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


恐怖克服のための心構え
長期化する不況や雇用不安の中で、社会全体の不安水準は高まり続けている。リストラ、失業、債務といった現実的な問題は、個人の生活基盤を揺るがし、心理的なストレスを増幅させる。こうした状況は単なる経済問題にとどまらず、心身の健康にも深刻な影響を及ぼし、不安障害や自殺リスクの増加として現れることがある。
「恐怖」や「不安」は誰にでも起こりうる自然な反応であるが、それが過剰に持続すると、動悸や息苦しさ、身体症状を伴う障害へと発展することもある。精神医学ではこれを不安障害やパニック障害として捉え、心と身体の両面からの理解と対応が求められている。
映画『めまい』は、高所恐怖症とトラウマ体験が結びつき、恐怖が反復される様子を象徴的に描いた作品である。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の概念が一般化する以前から、人間の恐怖記憶と回避行動の問題を鋭く描いていた点で象徴的な作品といえる。
恐怖症の克服には、単に恐怖を避けるのではなく、適切な条件のもとで再び向き合うことが必要である。そこには不安に対する理解と、段階的な適応のプロセスが不可欠となる。
2025年1月15日


復しゅう心にひそむ攻撃性
「リベンジ」という言葉が日常的に使われるようになって久しい。報復という行為は、ときに理解可能な動機を伴うがゆえに、かえって人の心に潜む攻撃性を見えにくくしている側面がある。
映画や物語において繰り返し描かれてきた復讐は、単なる暴力ではなく、傷ついた自己愛やプライドの表出でもある。一方で、精神障害に関連する行為には、しばしば動機の理解が困難であり、その攻撃性はむしろ自己へと向かう傾向が強い。
本稿では、復讐という行為の背後にある心理構造を手がかりに、現代社会における攻撃性とメンタルヘルスの関係について考察する。
2025年1月9日


苦しい現実、逃げたい時も
人は、耐え難い現実に直面したとき、どこまでそれを引き受けることができるのだろうか。仕事に生きがいを見出してきた人ほど、その基盤が崩れたときの喪失は大きい。不況や人間関係の軋みは、静かに、しかし確実に心を追い詰めていく。
フランス映画『しあわせはどこに』は、そうした極限状態の中で、ひとりの男が「別の人生」を生きることで心の均衡を保とうとする姿を描く。精神医学でいう「遁走(フーグ)」という現象は、現実からの単なる逃避ではなく、自己を守るための一つの反応でもある。
本稿では、逃避と再生のあいだにある心の働きを手がかりに、現代社会におけるストレスとメンタルヘルスについて考える。
2024年12月24日


医療と医学 近くて遠きもの
医療は目の前の患者を救うことを使命とし、医学は未知の解明を追い求める。この二つは密接でありながら、ときに大きな隔たりを見せます。ポリオ研究の中断や知的障害医療の停滞に象徴されるように、現実の医療現場では「治すこと」と「支えること」の間で葛藤が生じ続けています。本稿では、アルジャーノンに花束をとグッド・ウィル・ハンティングという対照的な作品を手がかりに、人間の知性と心のあり方、そして医療と医学の関係について考えます。
2024年12月23日


ダンスでいやす被ばくの苦痛
長い闘病や深い心身の苦痛を抱えながらも、人はなお生きる意味や支えを見出そうとする。長崎原爆による被ばくを経験し、その後も病と向き合い続けてきた人々にとって、日々の生活の中にある小さな喜びはかけがえのないものとなる。慢性的な痛みや不眠に苦しむ中でも、かつて情熱を注いだダンスが心の支えであり続ける姿は、人間の回復力の強さを物語る。
映画スウィング・キッズは、抑圧的な時代の中で音楽とダンスに自由を見出そうとする若者たちの姿を描き、表現活動が心に与える力を示している。現実の医療においても、薬物療法だけでなく、個人の「生きがい」や喜びに寄り添うことが、回復への重要な手がかりとなる。
癒やしは必ずしも劇的なものである必要はない。ささやかな楽しみが、長い苦しみの中で人を支えることもある。
2024年12月20日


幸福のクローバー、まず健康
人の幸福を形づくる要素として、異性、金銭、地位、そして健康が挙げられることがある。これらは「四つ葉のクローバー」にたとえられ、どれが欠けても人生に影を落とす可能性がある。しかし、すべてを満たすことは容易ではなく、多くの人が何らかの不全や喪失を抱えて生きている。とりわけ健康は、他の要素を支える土台であり、失われたときに初めてその重みが実感される。
映画マイ・ルームは、白血病という過酷な現実を通して、家族の葛藤と再生を描く。病は個人の問題にとどまらず、家族関係や人生観にまで影響を及ぼし、それぞれが抱えるわだかまりや距離を浮かび上がらせる。同時に、病を契機として人と人とのつながりが回復し、幸福の意味が問い直されていく。
豊かさや成功が注目されがちな現代においても、まず守るべきものは何か。健康という基盤の上にこそ、他の幸福は成り立っている。
2024年12月18日


こころの病、まず相談の決断
人生における出来事は、身体だけでなく心にも大きな影響を及ぼす。とりわけ普通の人々は、家族の喪失と葛藤を通して、心の病と向き合う過程を丁寧に描いた作品である。長男の死をきっかけに崩れていく家族関係の中で、次男は抑うつや自殺未遂といった危機に直面しながらも、支えを得て再生への道を歩んでいく。
こうした心の不調は、誰にでも起こり得るものであるにもかかわらず、実際に専門家へ相談するまでには長い時間を要することが多い。祈祷や民間療法に頼り続けた末にようやく医療機関へたどり着く例もあり、心の問題に対する社会的理解は必ずしも十分とはいえない。
精神的な不調は特別な人だけの問題ではなく、生活や人間関係の中で誰もが直面し得る現実である。そのため、早い段階で相談につながることの重要性が改めて問われている。
2024年11月27日


糖尿病、心理面の対処が重要
慢性疾患の治療において、身体面の管理だけでなく心理面への配慮が重要になっている。糖尿病は国内でも患者数が多く、生活習慣と深く関わる病気として知られているが、その経過にはストレスの影響が大きいとされる。診断そのものが心理的負担となるだけでなく、食事制限や運動療法といった自己管理もまた、患者に継続的なストレスを与える要因となる。
こうした悪循環の中では、病気そのものの治療と同時に、ストレスへの対処能力を高めることが重要となる。心理的安定が血糖コントロールにも影響を及ぼすことから、医療は身体と心の両面から支えられる必要がある。
映画生きるでは、余命を告げられた中年公務員が、自らの生の意味を見いだし、仕事に打ち込むことで心の再生を果たしていく姿が描かれる。そこには、限られた時間の中でも「どう生きるか」を選び直す人間の力が示されている。
2024年10月31日
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