中年期◆真剣な勉強にいい時期
- かゆかわクリニック院長 粥川裕平

- 9 時間前
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中日新聞朝刊 2006.09.08
「男はつらいよ」で有名な山田洋次監督は、現代の問題を庶民の視点で描ける人です。1993年の「学校」から2000年の「十五才 学IV」までの学校シリーズは夜間中学、養護学校、職業訓練校を舞台に、若者たち、大人たちの息吹をいきいきと伝えました。その中から「学校III」(98年)を紹介します。 主人公の紗和子(大竹しのぶ)は、夫が過労死し、十六歳の息子には自閉性障害があり、事務員の職をクビになったばかり。再就職に必要な「ビル管理」の資格を得るために職業訓練校に入ります。そこには、再就職を目指す中年男がいました。
中でも最も偏屈だったのは、リストラで証券会社の部長を辞めさせられた高野(小林稔侍)。昔の縁故頼みの再就職も失敗し、家族との関係も悪化。クラスの仲間とも交わろうとせず、身勝手な行動をしてひんしゅくを買います。でも、障害児を抱えながら前向きに生きる紗和子に次第にひかれていき、紗和子も高野を意識するようになります。恋がすんなりと進むはずはなく、いろんな事件が起き、仲間たちはけんかをしたり、助け合ったりしながら、学校生活を送ります。
バブル崩壊後の不況を時代背景に、中年の庶民の”青春群像”が楽しく、せつなくて、寅(とら)さんシリーズに通じる魅力を感じます。自閉症の子と母のエピソードは、鶴島緋沙子さん著の「トミーの夕陽(ゆうひ)」をもとに、山田監督が書き下ろしました。ひたむきでどこかほほえましい自閉症の子の不思議な魅力が、作品の感動を高めています。
考えてみれば、中年期とは何かを勉強することに適した時期だといえます。
人生体験を積んでいろいろ苦労した分、たくましさや集中力が身に付きますし、自分の役に立つことを真剣に学ぶ姿勢を持っている人が多いです。 そのパワーを勉強に生かし、情報を得たり、新しい仲間をつくったりすることが、老後の幸せにつながっていく気がします。学校の中に一人の大切な人生があり、人生がまた学校でもあることをしみじみと語りかける作品です。




