教師◆教育の持つ重み再認識
- かゆかわクリニック院長 粥川裕平

- 12 時間前
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中日新聞朝刊 2006.11.10
「卒業の朝」(2002年、アメリカ)
世界史の「履修漏れ」が明るみに出て、日本の教育界は大混乱。教えていない科目を単位認定するとは、学校ぐるみのカンニングのようなものです。
そこで思い出したのが、マイケル・ホフマン監督の「卒業の朝」で、歴史教師ハンダート(ケビン・クライン)が生徒たちに説いた名言。「知りつつ犯した罪は大きい」「人は、人生でいつか必ず、鏡に映る自分を直視せねばならない時が来る」―何とも象徴的です。
物語は、エリート養成の名門高校の教師を引退したハンダートのもとへ二十五年前の教え子ベルから「コンテストのリターンマッチをしたい」という手紙が届くところから始まります。
上院議員の息子であるベルは、野心的で狡猾(こうかつ)にして自己中心的、それでいて人気のある生徒で、成功のためには手段を選ばないという考えの持ち主です。ハンダートは、彼の人間性を高めようと情熱を注ぎますが、無理解な父親に妨害されます。それでもベルを立ち直らせたいあまり成績に手心を加え、晴れ舞台の「ジュリアス・シーザー・コンテスト」に出場させます。しかし、そこでベルのカンニングが発覚します。教師生活最悪の痛恨事でした。
そのベルが、今や大企業の経営者。戸惑いながら招待に応じたハンダートでしたが、ベルの真の狙いは政界進出の宣伝だったのです。それを知ってショックを受けたハンダートは、かつて自分がベルに手心を加えたことで落選した生徒に、心底から謝罪します。「知りつつ犯した罪」が実は自らの問題であることに気づくのです。
教師とは薄っぺらな知識やテクニックを伝える人ではありません。
生徒の全人格的な成長を願って、自ら考える力を醸し出す人です。
教育の持つ重み、醍醐味(だいごみ)が、この映画の真骨頂です。ハンダートの名言をかみしめつつ、教育の意味を、世界史を学ぶ大切さを再認識したいものです。




