書評『職業結合性うつ病』加藤 敏 著
- かゆかわクリニック院長 粥川裕平

- 2 日前
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月刊保団連 2017年1月 No.1230
勤労者を診察している
すべての医師に読んでほしい
『職業性うつ病』という表題そのものが衝撃である。精神科医の大多数はうつ病親和型性格 論を信奉していた。躁鬱病(双極 性障害)は内因性精神病で、先験的に環境要因は無関係という疾病観を抱いていた。そうしたうつ病や双極性障害を、業務起因性の気分障害も存在することを自験例に基づいて実証したわが国で初めての著作である。
本書は、「まえがき」と3編10章の本編(「 1編:職場結合性気分障碍 職場結合性うつ病・双極障碍」、「2編:神経衰弱とパニック障碍、うつ病」、「3編:現代社会の病理」)、「文献」、「あとがき」から構成されている。
「まえがき」で、自治医大が消防署を直轄する総務省の経営管理下にあるが故に、三次救急が必須とされること、周辺にわが国を代表する企業が集積していることを述べ、「職場におけるうつ病患者との出会いの中での臨床実践 の記述の集合体」であると自著を規定している。
著者は長くアカデミズムに在籍し、自治医科大学精神科教授を勤めた。欧米文献にも造詣が深く、精神病理学、精神分析学の領域でも多数の業績がある。加えて栃木県労災委員を務めながら勤労者の心の健康問題に鋭く言及する骨のある臨床医でもある。重い精神障害者の院内作業療法から社会復帰までを精神科病院では長年実践してきているが、その作業療法のわが国での草分けが、著者の祖父である加藤普佐次郎である。労働者の健康問題に並々ならぬ関心を抱き、「常識」や「定説」を覆すDNAと原動力を感じずにはいられない。
職場結合型うつ病、双極障害発病の主な誘因が職場での過重労働である。明らかな人格障害はない。職場結合の双極性うつも含めてグローバリゼーションの中で最近急増している。これは、企業 社会のメランコリー親和型化とも言える現代病である。ちまたで流行している「新型うつ病論」についても、批判的論考を加えている。学術的には試論的部分も含まれているが、現代型うつ病論として説得力のある唯一の著作である。過労死等防止法が施行され、今年度からすべての都道府県で過労死等防止推進センター事業が展開されている。国家行政にくみしない圧倒的マイノリティである著者は、過労死防止学会にも積極的に関与されている。
労災委員会が内因性と先験的に一蹴してきた双極性障害についても、「職場結合性双極障碍」の実在について論究した点で画期的である。嘱託産業医はもとより、勤労者を診察しているすべての医師必読の書と言えるだろう。





