なぞ解き◆はかなさを醸し出す


中日新聞朝刊 2006.10.20
「めまい」(1958年・アメリカ)
不可思議な出来事が次々に起こり、そのなぞが解明されていく中で、人間のはかなさがにじみ出てくる。巨匠ヒチコックの名作「めまい」は、サスペンスの王道を行く作品です。
主人公の刑事のジョン(ジェームズ・スチュアート)は、ビルの屋上で犯人を追跡中に、パニックを起こし、自分を助けようとした同僚が墜落死します。 失意のまま退職したジョンに、旧友が「妻を尾行してほしい」と依頼します。美しい妻マデリン(キム・ノバク)に自殺した曾祖母の霊がとりつき、夢遊病者のような行動をするというのです。
尾行を始めると、マデリンは曾祖母のゆかりの地を歩き回った末、ジョンの前で、海に身投げします。救助して励ますうち、ジョンはマデリンに恋心を抱きます。そして、夢によく出てくるという古い教会に一緒に出かけ、行動のなぞを解こうとするのですが、彼女はジョンに愛を打ち明けた後、教会の塔から飛び降りて命を絶ちます。
高所恐怖のジョンはパニック発作で動けませんでした。絶望して落ち込んでいたある日、ジョンは、街でマデリンに似た女性に出会い、強引に食事に誘って、愛し合うようになります。でも実は、彼女は死んだはずのマデリン。旧友が本物の妻を殺害するために打った芝居だったことが判明します。
真相に気づいたジョンは、現場に彼女を連れて行き、詰門します。彼女は「あなたを利用してお金をもらったが、あなたへの愛は真実だ」と泣いて訴えますが、悲しい結末が待っていました。
外傷体験によるジョンの高所恐怖と、真相を知られまいとするマデリンの苦悩が、ドラマを盛り上げます。夢や心の内面を効果的に使っているのは、フロイトの影響を受けたヒチコックならでは。
脚立に上って高所恐怖を克服しようと訓練する場面は、恐怖症の認知行動療法の原型を見事に描いています。
半世紀近くも前にこの映画が作られたのは驚きです。




