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院長コラム
—掲載媒体から探す—
院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


私のすすめる一冊『人類の進化が病を生んだ』
『人類の進化が病を生んだ』は、サイエンスライターのジェレミー・テイラーが、進化医学(Evolutionary Medicine)の視点から人間の病気の成り立ちを読み解いた科学読み物である。自己免疫疾患やアレルギー、不妊症、腰痛、眼疾患、がん、心臓病、アルツハイマー病など、多くの疾患を進化生物学の観点から考察し、「進化は健康ではなく生殖の成功を優先する」という進化論の基本原理をわかりやすく解説する。現代社会と人類の進化速度とのミスマッチが病気を生み出しているという視点は、従来の機械論的な疾病観に新たな問いを投げかける。医学・生物学に関心を持つ読者はもちろん、病気をより深く理解したい一般読者にも示唆に富む一冊である。
7月16日


孤独◆老後への気づき大切
イングマル・ベルイマン監督の名作『野いちご』(1957年)は、老年期における孤独と人生の回顧、そして家族との和解を詩情豊かに描いた傑作である。名誉博士号授与のため旅に出た老医師イサクは、旅の途中で過去の思い出や悪夢、さまざまな人々との出会いを通して、自らが築いてきた人生を見つめ直していく。夢と現実が交錯する独特の映像表現の中で、孤独の原因は他者ではなく、自らの生き方にあることが静かに浮かび上がる。人生100年時代といわれる現代において、本作は老後の孤独を防ぐために必要なのは、自分自身への気づきと他者とのつながりであることを深く問いかける、時代を超えた名作である。
7月14日


書評『睡眠のなぜ?に答える本 もっと知ろう!やってみよう!!快眠のための12ポイント』
『睡眠のなぜ?に答える本 もっと知ろう!やってみよう!! 快眠のための12ポイント』は、睡眠健康推進機構の大川匡子機構長、高橋清久前機構長の監修のもと、日本睡眠学会理事長・内山真先生をはじめとする睡眠医学の第一線の専門家が執筆した睡眠健康の実践書である。「質の良い睡眠は今日の疲れを癒し、明日への活力を生みます」という監修者の言葉を軸に、睡眠の基礎知識から快眠のための具体的な12のポイント、睡眠薬の正しい使い方、シフトワークや災害時の睡眠対策まで、科学的根拠に基づいて分かりやすく解説している。豊富な「睡眠物知りコラム」も読みやすく、子どもから高齢者まで幅広い世代の睡眠の悩みに応える内容となっている。睡眠不足や不眠が社会問題となる現代において、「眠り方改革」の重要性を提言する啓発書として、多くの人に薦めたい一冊である。
7月10日


ふるさと◆身近な美しさを再発見
『イル・ポスティーノ』(1994年)は、イタリアの小さな島を舞台に、一人の青年が詩人との出会いを通して、自らの人生と故郷の価値を見つめ直していく珠玉のヒューマンドラマである。政治亡命中のチリの詩人パブロ・ネルーダと、郵便配達人マリオとの世代を超えた友情は、詩の力によって青年の感性を育み、身近すぎて気づかなかった故郷の美しさを教えてくれる。恋や人生、社会への眼差しを深めながら成長するマリオの姿は、多くの人の心を打つ。主演のマッシモ・トロイージは重い心臓病を抱えながら本作を完成させ、公開直後に逝去した。その背景を知ると、フィリップ・ノワレとの温かな共演は一層深い感動を与えてくれる。故郷とは何か、人との出会いが人生をどう変えるのかを問いかける、不朽の名作である。
7月8日


書評『新型コロナ最前線 自治体職員の証言2020-2023』
『新型コロナ最前線 自治体職員の証言2020-2023』は、新型コロナウイルス感染症の最前線で住民の命と暮らしを支え続けた自治体職員41人の証言をまとめた記録である。保健所や医療機関、消防、保育・学童保育、介護・福祉、ごみ収集、本庁業務など、多様な現場から寄せられた体験を通して、パンデミック下における自治体行政の実態と課題を浮き彫りにする。さらに、自治体の役割や公衆衛生行政、非正規雇用、災害時の公務員の責務などを多角的に論じ、「公共」のあり方を問い直している。現場の当事者だからこそ語れる切実な証言には、行政運営や危機管理への重要な示唆が込められている。コロナ禍の経験を風化させず、今後の公衆衛生や自治体行政を考えるうえで、多くの示唆を与える一冊である。
7月4日


性差別 ◆暴力による支配に反旗
『カラーパープル』(1985年)は、20世紀初頭のアメリカ南部を舞台に、黒人女性が性差別やドメスティック・バイオレンス(DV)、人種差別という幾重もの抑圧に抗いながら、自らの尊厳を取り戻していく姿を描いた感動作である。父親からの性虐待、夫による暴力と支配に苦しむ主人公セリーは、自立した女性シャグとの出会いをきっかけに、自分の人生を生きる勇気を取り戻していく。原作はアリス・ウォーカーのピューリッツァー賞受賞小説、監督はスティーブン・スピルバーグ。主演ウーピー・ゴールドバーグの迫真の演技は高く評価された。本作は、DVが人間の尊厳を奪う暴力であることを描くだけでなく、被害者が沈黙を破り、自らの人生を切り開く希望を力強く伝えている。性差別や暴力の問題を考えるうえで、今なお色あせない名作である。
7月1日


書評『職場結合性うつ病』加藤 敏 著
『職場結合性うつ病』は、精神疾患と職場環境との関係を長年の臨床経験に基づいて論じた、加藤敏 による意欲作である。従来、うつ病や双極性障害は主として内因性の疾患と考えられ、職場環境との関連は十分に議論されてこなかった。本書は、過重労働や職場でのストレスが発症に深く関与する「職場結合性うつ病」「職場結合性双極障害」という概念を提示し、多くの自験例をもとに新たな視点を示している。精神病理学や精神分析学に造詣の深い著者は、労災委員や研究者としての経験も踏まえ、既成概念にとらわれない臨床的考察を展開する。過労死等防止法の施行以降、働く人のメンタルヘルスへの関心は一層高まっている。本書は、精神科医だけでなく、産業医やプライマリ・ケア医を含め、勤労者を診療するすべての医師に新たな視点を与えてくれる一冊である。
6月27日


ギフト:僕がきみに残せるもの(2016年、米国)
映画『ギフト』(原題:『Gleason』)は、NFLのスーパースターだったスティーブ・グリーソンの人生を追った感動的なドキュメンタリーである。2006年、ハリケーン・カトリーナで傷ついたニューオーリンズの人々に希望を与える劇的なプレーで英雄となった彼は、わずか数年後にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症する。さらにその直後、妻のおなかには初めての子どもが宿っていた。自分が息子の成長を見届けられないかもしれない――そんな現実を前に、グリーソンは未来のわが子へ向けたビデオメッセージを撮り始める。病気の進行によって歩行や会話の自由を失いながらも、家族への愛と希望を失わず、ALS患者支援団体「チーム・グリーソン」を設立。限られた時間を社会への贈り物へと変えていった。病や障がいに直面したとき、人は何を残し、何を伝えられるのか。本作はその問いに深い感動とともに向き合わせてくれる。
6月25日
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