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院長コラム
—掲載媒体から探す—
院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


統合失調症◆家族は見守る姿勢持って
『こわれゆく女』(1974年、アメリカ)は、ジョン・カサベテス監督による名作で、統合失調症を抱える一人の主婦と、その家族が直面する苦悩をリアルに描いたヒューマンドラマです。夫や子どもを深く愛しながらも、自らの感情や行動を制御できず苦しむメイベルと、彼女を支えようとしながら戸惑い、疲弊していく夫ニックの姿は、精神疾患が本人だけでなく家族全体に大きな影響を及ぼすことを教えてくれます。主演のジーナ・ローランズとピーター・フォークの迫真の演技も高く評価され、精神疾患への理解を深める作品として現在も語り継がれています。本作は、治療だけでなく、家族が本人の苦しさを受け止め、焦らず見守ることの大切さを問いかける映画です。
8月4日


私のすすめる一冊『自閉症の世界 多様性に満ちた内面の真実』
『自閉症の世界 多様性に満ちた内面の真実』は、自閉症スペクトラム(ASD)を単なる障害としてではなく、「脳多様性(ニューロダイバーシティ)」という視点から捉え直した読み応えのある一冊である。アスペルガーやレオ・カナーの足跡、自閉症スペクトラム概念を確立したローナ・ウィングの功績を丹念にたどりながら、自閉症研究の歴史と現代的意義を分かりやすく解説している。発達障害という診断名が広く知られるようになった今日、本書は「個性」と「障害」の境界について深く考えさせてくれる。映画『レインマン』にも触れながら、ASDの多様な認知特性や創造性を紹介し、人間理解をより豊かなものへと導く。医療・教育・福祉に携わる人はもちろん、発達障害について正しく学びたいすべての人に薦めたい良書である。
8月1日


第五十八回 白いカラス(2003年 米国)
『白いカラス』(2003年)は、フィリップ・ロスの小説『The Human Stain(ヒューマン・ステイン)』を映画化した社会派ドラマである。長年、ユダヤ人として生き、大学教授・学部長として成功を収めた主人公は、差別的発言と受け取られた一言をきっかけに社会的地位を失う。その後、ある女性との出会いを通して人生の再生を模索するが、過去の秘密と差別の現実が悲劇を招く。本作は、人種差別やアイデンティティ、偏見が人間の人生に与える影響を鋭く描き出すとともに、「本当の自分とは何か」という普遍的な問いを投げかける。精神的外傷や孤独、社会的烙印をテーマにした、人間理解に富む秀作である。
7月30日


なぞ解き◆はかなさを醸し出す
『めまい』(1958年)は、アルフレッド・ヒチコック監督が手掛けた心理サスペンスの最高傑作の一つである。元刑事ジョンは、高所での事故による心的外傷から高所恐怖症に苦しみながら、旧友から依頼された妻マデリンの尾行を引き受ける。しかし不可解な出来事が続き、恋愛、死、そして巧妙な殺人計画が絡み合う中で、事件の真相が明らかになっていく。本作は、サスペンスとしての完成度だけでなく、トラウマや恐怖症、夢、無意識など精神医学的テーマを巧みに取り入れた作品としても高く評価される。認知行動療法を思わせる恐怖症克服の描写も印象的であり、人間心理の複雑さと愛のはかなさを深く描いた不朽の名作である。
7月28日


私のすすめる一冊『道程 オリヴァー・サックス自伝』
『道程 オリヴァー・サックス自伝』は、『レナードの朝』で世界的に知られる神経内科医・作家オリヴァー・サックスが、自らの人生を率直に綴った回想録である。英国の医師一家に生まれ、科学者を志しながら臨床医への道を歩んだ経緯、アメリカでの研究生活、そして同性愛者としてのアイデンティティを包み隠さず語る姿は、医師としてだけでなく一人の人間としての誠実さを感じさせる。重量挙げやバイクへの情熱など意外な一面も描かれ、世界的な医学者の素顔が浮かび上がる。医学、文学、人生が交差する本書は、医療者はもちろん、人間とは何かを考えたいすべての読者に新たな視点を与えてくれる一冊である。
7月25日


第五十七回 風をつかまえた少年(2018年英国・マラウイ共和国合作)
『風をつかまえた少年』(2018年)は、アフリカ・マラウイ共和国で実際に起きた出来事をもとに制作された感動作である。2001年の大旱魃によって飢餓に苦しむ村で、理科好きの14歳の少年が、図書館で学んだ知識を生かして風力発電機を製作し、井戸から水をくみ上げて村を救う姿を描く。自然災害や貧困、森林破壊、食糧危機など現代社会が抱える問題を背景にしながらも、教育の力、再生可能エネルギー、環境問題、そして人間の創意工夫が未来を切り開く希望を伝えます。イソップ寓話「北風と太陽」と重ねながら、本作が現代社会へ投げかけるメッセージを考察します。
7月23日


成長◆音楽教師の人生の喜び
映画『陽のあたる教室』(1995年)は、一人の音楽教師が30年にわたり生徒たちと向き合いながら、自らも成長していく姿を描いた感動作である。作曲家を志して高校教師となったホランドは、当初は教育を生活のための仕事と考えていた。しかし、個性に応じた指導を重ねる中で、生徒たちの才能が開花し、教師としての喜びを見いだしていく。一方で、先天性難聴の息子との葛藤や家族との関係にも向き合い、音楽が人と人を結び付ける力を実感する。退職の日、教え子たちとの再会を通して、自分が残した最大の「作品」が生徒たちの人生そのものであったことに気づく。本作は、教育とは何か、教師の使命とは何かを問いかける名作である。
7月21日


第五十六回 サイドエフェクト
スティーヴン・ソダーバーグ監督の映画『サイド・エフェクト』(2013年)は、抗うつ薬の副作用をめぐる事件を軸に、医療倫理、精神医学、製薬業界、そして人間の欲望を描いた心理サスペンスである。インサイダー取引で服役した夫の出所後、うつ病歴のある妻が新薬を服用し、夢遊病状態で夫を刺殺したとされる事件が発生する。しかし、担当医が真相を追ううちに、事件の背後には巧妙に仕組まれた陰謀が浮かび上がる。本作は、精神疾患の診断の難しさや薬物療法のリスクだけでなく、「詐病」や医療過誤、株価操作まで絡めた重層的な物語を展開する。さらに、イソップ寓話「藪医者」を引用しながら、「医療とは何か」「薬との向き合い方とは何か」を考えさせる示唆に富んだ作品である。
7月18日
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