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院長コラム
—掲載媒体から探す—
院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


私のすすめる一冊『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』
人類はなぜ、地球上の生物の頂点に立つことができたのでしょうか。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』は、人類二百万年の歴史をたどりながら、言語、神話、宗教、国家、資本主義、科学技術などを壮大な視野で論じた一冊です。著者は、貨幣や国家、法律、企業など、人類の社会を支える仕組みの多くが「共同幻想」に基づいていると指摘します。狩猟採集から農耕へ移行した「農業革命」は、人類を豊かにした一方で、より忙しい生活をもたらしたという逆説も興味深いところです。そして遺伝子工学などの科学技術によって、人類は自らの身体や種そのものを変える力を手にしようとしています。人類の繁栄とは何だったのか。そして、私たちは本当に幸福になったのか。壮大な人類史から、現代を生きる意味を考えさせられる一冊です。
8月22日


第六十一回 オッペンハイマー(2023年 米国)
2023年公開の映画「オッペンハイマー」は、第二次世界大戦中のマンハッタン計画を率い、「原爆の父」と呼ばれた物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの栄光と苦悩を描いた作品です。原爆開発に成功した科学者は、その圧倒的な破壊力と広島・長崎の惨状に衝撃を受け、戦後には水爆開発に反対。やがて政治的な追及を受け、公職から追放されます。本作が問いかけるのは、科学技術の進歩そのものだけではありません。人類を破壊するほどの力を手にしたとき、科学者はその成果にどこまで責任を負うのか。イソップ寓話のプロメテウスにも触れながら、科学と倫理、核兵器、そして人類の未来について考えます。
8月20日


教師◆教育の持つ重み再認識
マイケル・ホフマン監督の『卒業の朝』(2002年・アメリカ)は、名門高校の歴史教師ハンダートを主人公に、教師の使命と教育の本質を問いかける作品です。日本で世界史の「履修漏れ」が問題となった2006年の記事では、学校教育のあり方を考える作品として取り上げられています。ハンダートは、野心的で自己中心的な生徒ベルの人間性を高めようと情熱を注ぎますが、彼を立ち直らせたいという思いから成績に手心を加え、結果としてカンニングを見逃すことになります。25年後、実業家となったベルから再びコンテストへの招待を受けたハンダートは、彼の変わらぬ自己中心性を目の当たりにし、自らの過去の判断を振り返ります。「知りつつ犯した罪は大きい」「人はいつか鏡に映る自分を直視しなければならない」という言葉は、生徒だけでなく教師自身にも向けられています。教育とは単に知識や技術を教えることではなく、一人の人間の成長を支える営みです。本作は、教育の持つ重みと醍醐味を改めて考えさせる映画です。
8月18日


私のすすめる一冊『スリープ・レボリューション 最高の結果を残すための 「睡眠革命」』
『スリープ・レボリューション 最高の結果を残すための「睡眠革命」』は、米国のジャーナリスト、アリアナ・ハフィントンが、現代社会における睡眠不足の危機と、睡眠の重要性を説いた一冊です。日本人の睡眠時間が半世紀の間に大きく減少する一方、スマートフォンやインターネットへの依存、長時間労働による過労死・過労自殺など、睡眠不足は個人の健康だけでなく社会全体の問題となっています。本書では、産業革命以降、効率や生産性を重視する社会の中で睡眠が軽視されてきた歴史を振り返り、睡眠科学の知見から、眠っている間にも脳や身体が活発に働いていることを紹介します。さらに、睡眠不足と糖尿病、心血管疾患、肥満、認知症などとの関連にも触れ、よりよい睡眠を実現するための方法や新しい技術を紹介しています。「眠らずに頑張る」ことが美徳とされがちな現代社会に対し、睡眠こそ健康と生存の基盤であると問い直す、現代人必読の一冊です。
8月15日


第六十回 裏窓(1954年 米国)
アルフレッド・ヒチコック監督の『裏窓』(1954年・アメリカ)は、事故で車椅子生活となった主人公が、退屈しのぎに向かいの集合住宅を覗くうち、殺人事件の疑惑に巻き込まれていくサスペンス映画です。深夜に大きな鞄を持って外出する男、花壇を気にする姿、肉切り包丁や小型のこぎりなど、主人公が目撃した断片的な情報は、次第に恐ろしい疑惑へと結びついていきます。しかし、友人の刑事はそれを妄想として退け、主人公の推理が正しいのか、それとも単なる思い込みなのか、観客も揺さぶられます。作品には、イソップ寓話「羊飼いの悪戯」、いわゆる「狼少年」の話が重ねられています。一度「嘘つき」と思われた人の言葉は、本当の危機に直面しても信じてもらえません。現代社会でも、誤情報や過剰な警告、冤罪など、真偽を見極める難しさは変わりません。「覗き」という行為の危うさも含め、他人の言葉や目撃情報をどう判断するのかを考えさせる一作です。
8月13日


大学◆大人の入り口での試行錯誤
『ハイヤー・ラーニング』(1995年・アメリカ)は、名門大学を舞台に、若者たちが差別、性、友情、暴力、アイデンティティーなどの問題に直面しながら、大人への入り口で試行錯誤する姿を描いた作品です。「黒人のスピルバーグ」とも呼ばれるジョン・シングルトン監督は、大学という社会の縮図を通して、現代アメリカが抱える人種対立や性差別、若者の孤独を浮かび上がらせています。黒人学生への差別に憤るメリック、ネオナチに傾倒していくレミー、性暴力をきっかけに社会運動へ向かうクリスティ。それぞれが傷つき、迷いながら自分の居場所を探します。やがて大学で起こる銃乱射事件は、「高等教育」というタイトルそのものに重い問いを投げかけます。大学とは単に知識を学ぶ場所ではなく、人間として成長するための試行錯誤の場でもある――そんなことを考えさせる映画です。
8月11日


私のすすめる一冊『一流の狂気 : 心の病がリーダーを強くする』
『一流の狂気―心の病がリーダーを強くする』は、イラン出身の精神科医ナシア・ガミーが、精神医学と歴史を融合させながら「危機の時代には、精神疾患を経験したリーダーの方が優れた判断を下すことがある」という大胆な仮説を展開した一冊である。政治・軍事・経済の歴史を彩った指導者たちを病跡学の視点から分析し、チャーチル、シャーマン将軍、テッド・ターナーらの事例を通して、うつ病や双極性障害、統合失調症と創造性・共感力・危機対応能力との関係を考察する。一方で、平時には安定した性格が長所となる「普通のリーダー」の限界にも目を向ける。精神疾患を美化するのではなく、人間の多様性とリーダーシップの本質を問い直す刺激的な一冊であり、精神医学だけでなく歴史や経営学に関心を持つ読者にも多くの示唆を与えてくれる。
8月8日


第五十九回 全地球史アトラス フルストーリー(2021年 You Tube)
『全地球史アトラス フルストーリー』(2021年公開・YouTube)は、地球誕生から生命進化、人類文明、そして地球の未来までを最新の地球科学と進化生物学の知見をもとに描いた壮大な科学映像である。太陽系の形成、プレートテクトニクス、生命の誕生と大量絶滅、カンブリア紀の生命大進化、恐竜の絶滅、人類の出現、農業革命から情報革命まで、約46億年に及ぶ歴史を一つの物語として理解できる構成になっている。
イソップ寓話「造船所のイソップ」を導入に据え、人類の文明や技術も地球という巨大な自然の営みの中に位置付けられることを示唆する。SDGsや環境問題が問われる現代において、人類の未来を長大な時間軸から見つめ直す契機となる、知的好奇心を刺激する優れた科学コンテンツである。
8月6日
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