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院長コラム
—掲載媒体から探す—
院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


ネルソン・マンデラの死を悼む
南アフリカのアパルトヘイト体制を終わらせた政治指導者 ネルソン・マンデラ は、27年に及ぶ投獄を経て解放され、その後初の黒人大統領となった。その歩みは単なる政治的勝利ではなく、報復ではなく「赦し」と「和解」を選んだ希有な実践として世界に記憶されている。
彼の人生は複数の映画作品でも描かれている。看守との関係性の変化を通して人間理解の深まりを描いた『マンデラの名もなき看守』(原題邦訳作品)、そしてラグビーを通じて国家統合を目指す姿を描いた インビクタス/負けざる者たち などである。さらに『マンデラ 自由への長い道』もまた、個人史と国家史が交差する生涯を映像化している。
対立を乗り越え、分断された社会を統合へ導く思想は、単なる理想ではなく現実政治の中で試された。その姿は、暴力の連鎖を断ち切ることがいかに困難で、同時にいかに必要であるかを示している。
2024年11月22日


第四十一回 LIFE!(2013年 米国)
人生は時に単調に見えても、その内側には豊かな想像と感情の世界が広がっている。LIFE!は、雑誌「LIFE」の写真管理部門で働く冴えない中年男性ウォルターが、失われたネガを探す旅に出る物語である。彼は空想の世界に逃避しながらも、現実の旅を通して少しずつ行動する勇気を取り戻していく。
北極圏からヒマラヤへと続く旅は、単なる冒険ではなく、自己変容の過程でもある。失敗や誤解、喪失を経て、ウォルターは他者との関係性や自分自身の価値を再発見していく。その過程で描かれるのは、派手な成功ではなく、静かな自己回復である。
人生(LIFE)は生命であり、生活であり、物語でもある。空想に閉じこもることと現実を生きることの間で揺れながら、人は少しずつ自分の「生」を形づくっていく。そこにこそ、この作品の静かな力がある。
2024年11月21日


第十九回 ショーシャンクの空に (1994年 米国)
善はすぐには報われず、悪は日常の中で絶えず姿を現す――イソップ寓話「善と悪」は、人間社会におけるこの不均衡を語る。
映画『ショーシャンクの空に』(1994年 アメリカ)は、無実の罪で収監された一人の男が、長い年月をかけて自由と尊厳を取り戻す過程を描いた作品である。理不尽な暴力や腐敗が支配する閉鎖空間において、善は即効性を持たず、むしろ時間をかけて少しずつ人の心に浸透していく。本作は、希望とは瞬間的な救済ではなく、忍耐と信念によって育まれるものであることを示している。見えにくい善が、やがて現実を動かす力へと変わる過程が、静かに、しかし力強く描かれている。
2023年12月19日


第二十五回 アラビアのロレンス (1962年 英国)
人はなぜ、あえて困難な道を選ぶのでしょうか。イソップ寓話「アラブ人と駱駝」は、負担を背負う者にとって上りも下りも同じ苦しみであることを示唆します。本稿では、アラビアのロレンスを通して、実在の軍人トマス・エドワード・ロレンスの生き様をたどりながら、理想と現実の狭間での選択、その代償について考えます。栄光の裏にある孤独や虚しさを見つめることで、現代にも通じる「道の選び方」の本質が浮かび上がります。
2023年6月1日


第二十四回 モル・フランダース (1996年 米英)
イソップ寓話「遭難者とアテナ女神」と映画『モル・フランダース』を通して、逆境に直面したときの人間の在り方を描きます。祈りに頼るだけでなく、自ら一歩を踏み出すことの意味とは何か。波瀾に満ちた人生を生き抜く姿から、困難の中でも道を切り開く力と、人間の強さと弱さを見つめ直します。
2023年5月9日


第二十一回 大逆転(1983年 米国)
イソップ寓話「石を曳き上げた漁師」が示すように、喜びと悲しみは表裏一体であり、人は状況の変化に翻弄される存在でもある。映画『大逆転』は、富と貧困という対極に置かれた二人の男の立場が入れ替わることで、人間の本質と社会の構造を浮き彫りにする。環境が人を形作るのか、それとも個人の資質がすべてなのか。軽妙なコメディの裏に潜む鋭い問いが、観る者に人生の不確かさと可能性を静かに突きつけてくる。
2023年1月30日


第十五回 タイタニック(1997年 米国)
人生はしばしば航海に喩えられる。順風満帆に見える旅路であっても、ひとたび嵐に遭遇すれば、その行方は容易に揺らぐ。古代の寓話が示すように、人は危機を脱した後ほど油断しやすく、本当の意味での備えや慎重さは試練の最中だけでなく、その後にも求められる。
映画『タイタニック』は、豪華客船の沈没という歴史的悲劇を背景に、身分や階層の違いが生死を分ける現実を描き出した作品である。ジャックとローズの恋愛は象徴的でありながら、その背後には、同じ船に乗りながらも決して交わることのない社会構造が横たわっている。
現実の災害においても、命が助かった後に待ち受けるのは、必ずしも安堵ではない。生活基盤の喪失や将来への不安は、長く心に影を落とす。生き延びることと、生き続けられることは同義ではないのである。だからこそ、危機を免れた後も含めて、人間はどのように生を支えていくのかを考え続けなければならない。
2022年9月27日


第十二回 モダン・タイムス(1936年)
モダン・タイムス(1936年)は、チャールズ・チャップリンが近代工業社会の矛盾を鋭く風刺した代表作である。機械化された工場で単調な作業に追われる主人公チャーリーは、やがて精神的に追い詰められ、社会の流れからはじき出されていく。
本作は、効率と生産性を最優先する産業社会の中で、人間が「歯車」と化していく現実を描き出す。その一方で、自由を求めることは不安定な生活や貧困と隣り合わせでもあるという、根源的なジレンマを提示している。
古代イソップ寓話にある「自由の道」と「奴隷の道」の比喩が示すように、人間は常に安定と自由の間で揺れ動く存在である。本作は80年以上前の作品でありながら、現代の労働観や生き方にも深い問いを投げかけ続けている。
2022年7月27日
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