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母とときた道(2007年 中国)

執筆者の写真: かゆかわクリニック院長 粥川裕平
かゆかわクリニック院長 粥川裕平
17 分前
読了時間: 2分
ナチス時代のベルリンで観衆の前に立つ預言者ハヌッセンの印象的な場面

愛知保険医新聞刊 2008/12


畔道を奇麗に塗りあげ家畜と野菜を育て自給自足していた半世紀前が銀幕一杯に蘇る珠玉の作品「さくらんぼ 母ときた道」。一九八〇年代の中国雲南省は、棚田があり、豚や鶏を飼い、食事と言えばご飯と一品のおかずだけ。足が不自由な働き者の男と喋れない女が夫婦になる。貧しい夫婦に唯一許される楽しみは、食の団欒と性の交わりだけだった。


女は樹に上り好物の桜桃を食べている間に眠ってしまうが、近くで赤ちゃんの泣き声が。天からの授かりものと喜んで抱いて家に連れ帰るが、男は反対する。女の愛が赤ちゃんに向けられたストレスから、男は赤ちゃんを福祉に預けるが、必死に追いかける女の母性に心を絆され養子に引き取る。


やがて赤ちゃんは少女に育つが、学校で「お前の母さんうすのろ」と罵倒され、母にやつあたりをする。そんな娘の思いなど理解できない母は、純粋な愛情を精一杯ふりそそぐ。字も書けない母に、成長した娘は字を教え、母への「うすのろ」との悪口に毅然と反撃する。侘しい三人家族に本当の幸せの絆が生まれる。娘は勉学に励んで医師となり、知的障害の母を愛せるようになった心情を語り、サクランボの甘酸っぱい味に母の無前提的な愛を回想する。


母親の知的障害という診断は果たして適切か。足の不自由はあっても、村人に胡弓を弾いて心を和ませる父親の一面は、DVと不釣り合いな感もある。それはともかく家族についてのどかな田園風景の中で静かに問いかける。


「ばか、カバ、チンどん屋、お前の母ちゃん出臍」の罵詈雑言が飛び交った少年時代。遠い遠い半世紀前の良き田舎を想起させる作品でもある。





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