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医学◆患者さんは教師である

  • 執筆者の写真: かゆかわクリニック院長 粥川裕平
    かゆかわクリニック院長 粥川裕平
  • 18 分前
  • 読了時間: 2分

中日新聞朝刊 2006.11.24



「レナードの朝」(1990年、アメリカ)



医学の真の発展は、患者さんの病態をつぶさにとらえることによってもたらされます。医師は日々患者さんから学んでいます。それを象徴する「レナードの朝」は1969年、ニューヨークの神経疾患の専門病棟で実際に起きた「ひと夏の奇跡」の物語です。


その病院には、脳炎の後遺症で、話もできず、身動きもしない「嗜眠(しみん)状態」の患者さんが多数入院していました。基礎医学から臨床に転じたばかりのセイヤー医師(ロビン・ウィリアムズ)は、 患者さんたちに反射神経が保たれていることを発見し、球投げでリハビリを試みます。その熱意は、回復をあきらめていたスタッフを突き動かします。


セイヤーは、患者さんの硬直が解ければ脳機能が復活するのではと仮説を立て、パーキンソン病の治療薬の投与を思いつきます。その候補に選ばれたのが、十一歳から三十年間嗜眠状態のレナード(ロバート・デ・ニーロ)でした。


効果は劇的でした。長い眠りから目覚めたレナードは、失われた三十年を悲しみつつも、自分の足で歩き、会話できることに興奮し、恋もします。意を強くしたセイヤーは他の患者さんへの投薬を理事会に申請します。その結果、みな次々にベッドから起き上がり、ダンスも楽しめるようになりました。


しかし、レナードの回復はつかの間で、感情まで不安定になります。混乱は他の患者さんにも広がり、セイヤーは実験を試みたことを悩みます。


ある日、激しいけいれんを起こしたレナードは、硬直したまま、「おれを撮影しろ、おれに学べ」とセイヤーに叫びます。結局、すべての患者さんの目覚めは一時的なものでした。でも、人づきあいが苦手だったセイヤーは、患者さんと心を通わせる喜びを知り、研究を続ける決意をします。


難治、不治と言われていた病に回復の可能性をもたらしたのは、治療法の開発をあきらめない医師や治療スタッフ、そして何よりも患者さん自身とそのご家族の協力と恊働の作業にほかなりません。





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