悪魔◆欲望や感情に打ち勝って


中日新聞朝刊 2006.12.15
「セブン」(1995年、アメリカ)
キリスト教の「七つの大罪」をご存じでしょうか。「高慢、嫉妬(しっと)、暴食、色欲、怠惰、強欲、憤怒」。それぞれの感情や欲望をつかさどる悪魔がいて、人を罪に導くとされています。
「セブン」は、「七つの大罪」を主題にした連続殺人犯と、それを追う刑事たちの物語です。
最初の被害者は肥満の大男でした。食べ物の中に顔を埋めて死んでおり、現場に「暴食」のメッセージが残されていました。続いて、敏腕弁護士が殺され「強欲」の血文字が…。退職間近のサマセット(モーガン・フリーマン)と、血気盛んな新人ミルズ(ブラッド・ピット)の二人の刑事が、懸命に捜査しますが、浮かんだ容疑者は「怠惰」の文字とともに殺されます。
でも、図書館の貸し出し記録から、ジョン・ドゥ(ケビン・スペイシー)という男が浮かびます。その後も「色欲」(売春婦)、「高慢」(美人モデル)と殺人が続きますが、ジョン・ドゥは突然に自首。そして刑事たちに「残り二つの殺人現場に案内する」と言います。彼は、奇想天外な幕切れを用意していました。 法を守る刑事も「憤怒」にかられれば殺人を犯すのだと、自分の身で証明し、七つの殺人を完結させたのです。名優たちの熱演で、緊迫感あふれるサイコスリラーでした。
ジョン・ドゥはまさに「悪魔の化身」として描かれていました。「人間は罪深い存在であり、信仰によって神の許しを得る」というキリスト教の教義を理解しないと、この映画の本質は分かりにくいでしょう。
日本は、殺人事件が少ない国ですが、それでも最近は、動機の不明な事件が起こると「心の闇」といった言葉がよく使われます。犯罪の背景をきちんと検証せずに異常性を強調するのは、偏見や差別につながりやすく問題だと思います。
人の心の中には悪魔などいない。そう信じつつ、クリスマスを迎えたいものです。




