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院長コラム
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院長はこれまで、新聞連載や寄稿記事、専門誌、企業の社内報など、さまざまな媒体で執筆を続けてきました。
映画や文学を題材としたエッセイをはじめ、こころの健康や精神疾患、人間関係、社会問題などについて、それぞれの媒体の読者に向けて発信してきました。時代や読者層が異なっても、人間のこころへの関心は一貫しています。
このページでは、これまでに掲載されたコラムを媒体ごとにまとめています。それぞれの媒体でどのようなテーマが語られてきたのかをたどりながら、お読みいただければ幸いです。


第七十回 7月4日に生まれて(1989年 米国)
映画『7月4日に生まれて』は、ベトナム戦争に従軍し、下半身不随となった青年ロン・コーヴィックの半生を描いた作品です。愛国心から戦場へ向かった青年は、戦争の現実を目の当たりにし、自らも深い傷を負って帰国します。しかし、帰還兵を待っていたのは英雄としての称賛ではなく、戦争への批判や社会からの冷たい視線でした。やがて青年は、自らの戦争体験をもとに反戦運動へと身を投じていきます。冒頭のイソップ寓話「ウマと騎馬兵」は、戦争が必要なときだけ人間を利用し、不要になれば見捨てる社会の姿を象徴しています。戦争は戦場で人を傷つけるだけではありません。生きて帰った人の心や、その後の人生までも変えてしまいます。本作は、愛国心、国家、戦争、障害、PTSD、そして人間の尊厳について考えさせる作品です。
10月15日


復讐◆最も罪深い行為は何か
映画『スリーパーズ』は、少年院で虐待を受けた少年たちが、14年後にかつての看守への復讐を企てる物語です。幼少期に受けた暴力や性的虐待は、少年たちのその後の人生を大きく変えていきます。やがて被害者だった彼らは、復讐という形で再び暴力に手を染めることになります。加害者と被害者、罪と罰、復讐と正義――それぞれの境界は決して単純ではありません。過去の傷を抱えた人間が、どこまで自分の行為に責任を負うのか。そして、最も罪深い行為とは何なのか。ボビー神父が苦悩する姿を通して、人間の罪と赦し、虐待と犯罪の連鎖について考えさせられる作品です。
10月13日


私のすすめる一冊『21 Lessons:21世紀の人類のための21の思考』
ユヴァル・ノア・ハラリの『21 Lessons』は、『サピエンス全史』『ホモ・デウス』に続き、21世紀を生きる人類が直面する課題を幅広く論じた一冊です。AIや自動化による雇用の変化、自由と平等、ナショナリズム、宗教、移民、戦争、ポスト・トゥルース、科学、教育、そして人生の意味まで、現代社会を形づくるさまざまな問題を取り上げています。人類は科学技術を発展させ、国境を越えた経済や情報社会を築いてきました。一方で、世界規模の問題を抱えながら、政治や社会の仕組みは依然として国家単位にとどまっています。本書は、変化の激しい21世紀を人間はいかに生きるのかを考えるための、現代社会への思考の手引きとなる一冊です。
10月10日


第六十九回 未来への警鐘原発を問う(2022年 米国)
オリヴァー・ストーン監督のドキュメンタリー『未来への警鐘 原発を問う』は、気候変動とエネルギー不足という二つの課題を背景に、原子力エネルギーの可能性を問い直す作品です。映画は、石炭などの化石燃料による環境・健康への影響や、再生可能エネルギーの拡大を取り上げながら、現在のエネルギー需要を満たすために原子力を選択肢として考える必要があるのではないかと問題提起します。一方、人類は原子爆弾、チェルノブイリ、福島第一原発事故など、核技術の大きな危険も経験してきました。映画の主張をそのまま受け入れるのではなく、科学技術の進歩とリスク、環境、経済、そして人類の未来をどう考えるか。本作は、エネルギー問題を通して文明のあり方を問いかける作品です。
10月8日


愛は強い◆戦地に咲く一途な思い
ロベルト・ベニーニ監督・主演の『人生は、奇跡の詩』は、イラク戦争下のバグダッドを舞台に、愛する人の命を救おうと奔走する一人の詩人の姿を描いた作品です。詩人で大学教授のアッティリオは、別居中の妻ヴィットリアを忘れられず、毎晩のように彼女との結婚式を夢見ています。そんなある日、ヴィットリアがバグダッドで戦争の爆撃に巻き込まれ、危篤状態になったとの知らせが届きます。アッティリオは危険を顧みず現地へ向かい、薬も医療設備も乏しい状況の中で、彼女の命を救おうと奔走します。戦争の悲惨さを背景に、家族愛と人間愛、そして「愛する人を守りたい」という一途な思いの力を描いた作品です。
10月6日


私のすすめる一冊『証言 治安維持法:「検挙者10万人の記録」が明かす真実』
1925年に制定された治安維持法は、当初、国体の変革や私有財産制度の否認を目的とする結社などを取り締まる法律として制定されました。しかし、本書によれば、その後の20年間の運用では一般の市民にも対象が広がり、当事者や遺族の証言、公文書に記された検挙者数のデータから、その実態が検証されています。NHK「ETV特集」取材班による『証言 治安維持法――「検挙者10万人の記録」が明かす真実』は、個々の証言を入り口に、法律がどのように運用され、社会にどのような影響を及ぼしたのかをたどる一冊です。著者は治安維持法だけでなく、戦前・戦中の治安体制と戦後の治安体制の連続性にも目を向けています。
10月3日


第六十八回 国宝(2025年 日本)
映画『国宝』は、任侠の家に生まれながら上方歌舞伎の世界に入り、女形として芸の道を極めていく立花喜久雄の波瀾万丈の人生を描いた作品です。生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介と、血筋には恵まれないものの天性の才能を持つ喜久雄。二人はライバルとして互いに切磋琢磨しながら芸を磨いていきます。しかし、師匠の後継者指名をめぐり、二人の運命は大きく変わっていきます。才能と努力、血筋と実力、歓喜と絶望、信頼と裏切り。歌舞伎という伝統芸能の世界を舞台に、人間の嫉妬や羨望、そして芸を極めることの意味を考えさせる作品です。
10月1日


希望◆ホームレスの2人の夢
『聖者の眠る街』は、ニューヨークの路上で暮らす二人のホームレスの友情を通して、人間の尊厳と希望を描いた作品です。ベトナム帰還兵で家族とも別れたジェリーと、統合失調症を患い、親からも見放された若者マシュー。社会から孤立した二人は、互いを支えながら、アパートを借りて商売を始めるという夢を語り合います。やがてマシューは、ホームレスの人々の中にある美しさを写真に収め始めます。厳しい現実の中でも、人は友情や支え合いによって希望を取り戻すことができる。作品が描く「希望と自由と尊厳を失わない限り、人は美しい存在である」というメッセージは、現在にも通じるものがあります。
9月29日
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